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(映画)蝉しぐれ(2005年)の感想とあらすじは?

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感想/コメント

藤沢周平作品の名作が原作

原作の「蝉しぐれ」は、藤沢周平作品のなかで確実に上位5位以内に入る名作です。

これは藤沢周平ファンや藤沢周平作品をある程度読んだことがある人なら、一致した意見だろう、と勝手に思っています。

ですから、下手な作品だと、酷評される可能性がある作品です。

個人的には、藤沢周平ファン、特に蝉しぐれファンの人が、この映画を見て極端な不満を持つことはないと思いました。

同時に、藤沢周平を知らない人も、この映画を見れば藤沢周平の魅力に気が付くかも知れません。

原作が元々良いことに加え、原作の雰囲気を壊さず、また、原作の舞台となっている庄内でロケを行ったのがとても良かったようです。

藤沢周平ファンの私としては、藤沢周平が見て育った風景というのは、こういう美しいものなのかと、思いながら見ました。

坂道のシーン

さて、本作は映画化される以前に、NHKでドラマ化されました。この映画化にあたっては、NHKのドラマよりはましなものを、ということを期待していました。

というのも、NHKのドラマには不満な点があったからです。それは、主人公・牧文四郎の父・助左衛門が切腹を申し渡され、その亡骸を文四郎が引き取る場面です。

この場面については、映画の方がイメージしていたものに近かったので嬉しかったです。

この父・助左衛門の死は、牧文四郎の幼年期を強制的に終了させた出来事でした。

助左衛門の遺体を引き取った文四郎は荷車で家に帰るのですが、この道中で最も象徴的なのが、荷車で坂道を登るシーンです。

この坂道は牧文四郎が幼年期に別れを告げ、これから待ち受ける苦難を乗り越えなければならないことを象徴しています。

坂は決別と苦難を象徴しているのと同時に、一方では希望をも象徴しています。

どんな坂も必ず終わりがあるからです。

ですから、この坂のシーンには決別と苦難と同時に希望も表現されていなければならないのです。

原作を読んでいるときから、常々この坂道は真っ直ぐな一本の道であって欲しいと思っていました。

曲がってねじれた坂ではあって欲しくなかったのです。

その真っ直ぐの坂道を、牧文四郎に一歩一歩しっかりと、力強く歩んで欲しいと思っていました。

そして、登り切った坂の上には空が開けていて欲しいと思っていたのです。

苦しく長い坂を越えたあとに広がる空はどんなにか素敵でしょう。

この開ける空が牧文四郎の救いになるように思えるのです。

映画では、坂の向こうには青い空が広がっていました。

おかげで、牧文四郎の未来に対する救いを感じることができました。目頭が熱くなったシーンです。

金曜時代劇 蝉しぐれ
藤沢周平の小説世界を見事にドラマ化した、平成15年(2003)放送の傑作時代劇。結ばれることはなくても人を純粋に愛し、どんな逆境にあっても人が人らしく生きることをひたむきに問いかけてきます。牧文四郎役の内野聖陽の魂を込めた熱演、ふく役の水野...

音楽

音楽も映画を盛り上げてくれました。一青窈の曲がイメージソングですが、一青窈のボーカルは流れません。

ですが、逆にその分だけ、映像に集中することが出来ました。これはとてもよい演出だと思います。

この演出のおかげで、見せ場のシーンでは映画館内ですすり泣く人が多かったです。

映画では音楽をこう使うんだ、という一つの類型を示してくれたように思います。とても良い音楽の使い方でした。

キャスティングのことなど

ですが、何カ所か冗長的な場面があったり、逆に、人物関係を省略しすぎているので、もう少し詳しく描いた方が良いのではないかと思う場面もありました。

見ている最中には、そのそれぞれが気になりました。もしかしたら、原作を知らない人の中には、話の筋を追えなかった人もいるかも知れません。若干のマイナス要素でしょう。

他にもマイナス要素があります。それは、キャスティングです。特にミスマッチだったのが、小和田逸平役のふかわりょうと島﨑与之助役の今田耕司です。

なんで?別に笑いを取る場面のある映画ではありません。コミカルな要素が無いのです。何を狙ってのキャスティングだかさっぱり分かりませんでした。

小和田逸平と島﨑与之助は重要な配役ですので、もう少し真剣に考えてほしかったものです。

主人公のキャスティングにはそれ程不満を感じませんでした。

文四郎役の市川染五郎は線が細いのと、口が半開きで演技しているシーンは、だらしなく見えましたが、歌舞伎役者ならではと唸らせる場面もあり、概ね好演技でした。

ですが、同じ歌舞伎役者なら、もう少し重厚感のある歌舞伎役者を使った方が良かったように思います。

ふく役の木村佳乃は思っていた以上に良かったです。

なくても良かった場面

一つ注文があるとすれば…

矢田作之丞と妻・淑江の部分をばっさり切捨てて、かわりに犬飼兵馬との因縁を詳しく描いた方が良かったように思います。

原作では、文四郎が道場の先輩である矢田作之丞の妻・淑江にほのかに寄せる恋心が描かれています。

重要な部分なのは確かなのですが、映画にこのエピソードを入れると、話がぼやけてしまいます。

ここは思い切って切捨ててもよかったのではないでしょうか。

原作のある映画というのは、必ずしも原作通りというわけではありませんが、映画には原作とは違う良さが出るものです。この映画がまさにそうだと思います。

原作の紹介は「時代小説県歴史小説村」で。
蝉しぐれ

藤沢周平「蝉しぐれ」の感想とあらすじは?
藤沢周平の長編時代小説です。時代小説のなかでも筆頭にあげられる名著の一冊です。幼い日の淡い恋心を題材にしつつ、藩の権力闘争に翻弄される主人公の物語が一つの骨格にあります。

映画化された藤沢周平作品

公開年順

  1. たそがれ清兵衛(2002年)
  2. 隠し剣鬼の爪(2004年)
  3. 蝉しぐれ(2005年)(本作)
  4. 武士の一分(2006年)
  5. 山桜(2008年)
  6. 花のあと(2010年)
  7. 必死剣鳥刺し(2010年)
  8. 小川の辺(2011年)
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あらすじ/ストーリー/ネタバレ

牧文四郎は親友の小和田逸平と島﨑与之助と共に同じ道場で剣術に打ち込んでいる。隣家には美しくなってきた娘ふくがいる。与之助は剣の筋が悪いかわりに、勉強ができた。

そして、与之助は江戸へ留学をすることに決まった。一方、逸平は家督を継ぐことになった。

そんな中、海坂藩の権力闘争に父助左衛門が巻き込まれて、切腹を申しつけられた。頼りにし、尊敬していた父の死に毅然とした態度で挑む文四郎。

家禄は減らされた。文四郎はまだ元服前なので、家は継げない。ひたすら剣術に打ち込んだ。

隣家のふくが江戸の屋敷に奉公することが決まったという。ふくとの距離が遠くなるのを感じる文四郎だった。

文四郎は剣術の腕が認められ、ひとかどの剣士となっていた。そして、家禄も元に戻された。その中、与之助からふくが国元に戻ってきたことを聞いた。

しかも、藩主の子を身ごもっているとのことである。このことが海坂藩の権力闘争を再燃させた。文四郎はその意志にかかわらず、この闘争に巻き込まれ…

映画情報(題名・監督・俳優など)

蝉しぐれ
2005

監督:黒土三男
製作:俣木盾夫
脚本:黒土三男
撮影監督:戸澤潤一
撮影:釘宮慎治
美術監督:櫻木晶
衣装:林田晴夫
編集:奥田浩史
音楽:岩代太郎
照明:吉角荘介
録音:橋本泰夫
助監督:森宏治

配役/出演:
牧文四郎/市川染五郎(7代目)
ふく/木村佳乃
小和田逸平/ふかわりょう
島崎与之助/今田耕司
文四郎(子供時代)/石田卓也
ふく(子供時代)/佐津川愛美
逸平(子供時代)/久野雅弘
与之助(子供時代)/岩渕幸弘
登世/原田美枝子
牧助左衛門/緒形拳
小柳甚兵衛/小倉久寛
ます/根本りつ子
犬飼兵馬/緒形幹太
青木孫蔵/大地康雄
淑江/原沙知絵
磯貝主計/柄本明
里村左内/加藤武
矢田作之丞/山下徹大
石栗弥左衛門/利重剛
相羽惣六/矢島健一
尾形/麿赤兒
藤次郎/田村亮
権六/三谷昇
関口晋助/大滝秀治
おとら/渡辺えり子

https://www.semishigure.jp/

2005年前後の興行収入ランキング

歴代の興行収入ランキング

  1. 日本歴代興行収入ランキング(Top100)
  2. 世界歴代興行収入ランキング(Top200)
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