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レヴェナント: 蘇えりし者(2015年)の考察と感想とあらすじは?

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Revenantには、帰ってきた人、亡霊、幽霊という意味があります。

原作はマイケル・パンクの小説「蘇った亡霊:ある復讐の物語」です。

アメリカの西部開拓時代を生きた実在の罠猟師ヒュー・グラスの半生と、彼が体験した過酷なサバイバルの旅を描いています。

ヒュー・グラス(Hugh Glass、1780年頃 – 1833年)は、アメリカ西部開拓時代のフロンティアの罠猟師で毛皮商、探検家です。

ペンシルベニア州のスコットランド系移民の家庭に生まれ、ミズーリ川沿いに現在のモンタナ州、ノースダコタ州、サウスダコタ州およびネブラスカ州のプラット川にわたる地域を探検しました。

ハイイログマに襲われて重傷を負い旅の仲間に見捨てられながらも生還した話は長い年月にわたり語り継がれ、「荒野に生きる」(1971年) および本作で映画化されました。

第88回アカデミー賞では、監督賞、主演男優賞、撮影賞を受賞しました。主演のレオナルド・ディカプリオは初の受賞です。

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感想/コメント

自然光を利用した映像

本作の魅力の一つは、光の加減でしょう。

物語の舞台となった時代には電灯が普及していなかったことを考慮して、撮影はすべて自然光のみで行われたそうです。

その結果、本作では自然の姿を繊細にとらえることができています。

また、カメラの使い方から、見ている側が主人公のすぐそばにいるような錯覚を覚える場面があります。

主人公グラスが地面を這いながら荒々しく呼吸する場面ではレンズが曇りました。

太陽の強い光が差し込めば虹色の模様のようなレンズフレアが発生しました。

飛び散った血がレンズに付着した場面もありました。

神話的構造

この映画で描かれるのは、神話的構造です。

本作で繰り返し登場し、ラスト近くでも印象的に語られる言葉があります。

Revenge is in God’s hands, not mine,

復讐は神の手に委ねられた、私の手ではない。

映画の終盤で、ヒュー・グラスが川でフィッツジェラルドを追い詰めます。

ですが、アリカラ族の一団に囲まれていることに気付き、最期はフィッツジェラルドを川に流して、アリカラ族に委ねました。

アリカラ族はフィッツジェラルドの頭の皮をはいで殺しましたが、ヒュー・グラスは見逃されます。アリカラ族の族長の娘を助けたからです。

二つの復讐劇

映画ではグラスの復讐劇と、ネイティブ・アメリカンの復讐劇、この2つの復讐劇が時には交わりながら、同時進行で進みます。

物語は主人公グラスの一行がアリカラ族の襲撃を受けるところからが始まります。

この襲撃は酋長の娘ポワカを毛皮商人たちが拉致したからでした。侵入者に娘を誘拐されたら取り返しに行くのです。

一方で、グラスが息子ホークのためにフィッツジェラルドの追跡を続けるのですが、それは映画の冒頭でグラスたちを襲うアリカラ族の人たちと全く同じ動機です。

ヒュー・グラスの実話と映画との違い

1823年、グラスはミズーリ川上流域でクマに重傷を負い、仲間に「死んだ」と見なされて置き去りにされます。

彼を置き去りにした仲間は、銃や火打石などの道具を奪って去りました

グラスは自力で這い進み、バッファローの死骸を狼から奪って食べ、虫やヘビなども食料源にするなどして、数週間かけてフォート・キオワに到達します。

彼は自分を見捨てた仲間への復讐はしませんでした。

ブリッジャーは若年であったため許し、とフィッツジェラルドは後に軍に入隊し免責状態となりました。

ヒュー・グラスは1833年にまたもアリカラ族の攻撃で命を落としたとされています。

さて、映画独自の設定がいくつかあります。

グラスにポーニー族の妻との間に息子ホークがおり、フィッツジェラルドによって殺され、彼の復讐の動機となっています。

子どもについてはよく分かっていないようです。

また、映画では雪の降り積もる中で話が進行しますが、実際は夏から秋の時期でした。

音楽

音楽は、坂本龍一、カールステン・ニコライによって共同制作されました。

比較的リズムが少なく、チェロの長い持続音が中心です。

また、低密度ながら映画の中に流れる緊張感を静かに描写しています。

映像の雰囲気にマッチしており、寒々しさの中に乾いた感じで、過度な装飾を廃したミニマルな音楽です。

まるで音のない厳寒の自然そのものを感じさせ、自然の風景と同化するような音です。

雪と風、冷気の中に放り込まれたグラスの孤独が心の響いてくる音楽でした。

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映画情報(題名・監督・俳優など)

監督 / アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
製作 / アーノン・ミルチャン、スティーヴ・ゴリン、アレハンドロ・G・イニャリトゥ、メアリー・ペアレント、ジェームズ・W・スコッチドポール、キース・レドモン
製作総指揮 / ブレット・ラトナー、ジェームズ・パッカー、ジェニファー・デイヴィソン、デヴィッド・カンター、ポール・グリーン、マーカス・バーメットラー、フィリップ・リー
原作 / マイケル・パンク
脚本 / マーク・L・スミス、アレハンドロ・G・イニャリトゥ
撮影 / エマニュエル・ルベツキ
視覚効果監修 / リッチ・マクブライド
プロダクションデザイン / ジャック・フィスク
衣装デザイン / ジャクリーン・ウェスト
編集 / スティーヴン・ミリオン
音楽 / 坂本龍一、カールステン・ニコライ

ヒュー・グラス / レオナルド・ディカプリオ
ジョン・フィッツジェラルド / トム・ハーディ
アンドリュー・ヘンリー / ドーナル・グリーソン
ジム・ブリッジャー / ウィル・ポールター
ホーク / フォレスト・グッドラック
アンダーソン / ポール・アンダーソン
マーフィー / クリストッフェル・ヨーネル
スタビー・ビル / ジョシュア・バーグ
エルク・ドッグ / ドウェイン・ハワード
ポワカ / メラウ・ナケコ
トゥーサン / ファブリス・アッデ
ヒクク / アーサー・レッドクラウド
ブーン / クリストファー・ロザモンド
デイヴ・ストマック・ウーンド / ロバート・モロニー
ジョーンズ / ルーカス・ハース
フライマン / ブレンダン・フレッチャー
ウェストン / タイソン・ウッド
ベケット / マッカレブ・バーネット
ヒュー・グラスの妻 / グレイス・ドーヴ

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