宇宙を舞台にした映画で、ここまで「無重力(zero gravity)」をリアルに表現できた映画はないのではないでしょうか。久しぶりの映像革命といっていいです。
本人の視線から見た映像もリアルでしたが、それ以上に人物の浮遊感を描くのに、通常であれば定点からの撮影にするところを、撮影点を3次元的に移動させながら撮影したのが、とても浮遊感を醸し出していたと思います。
見ているだけで、宇宙にいるような感覚になるのは、この映画が初めてです。これは撮影監督のエマニュエル・ルベツキの力が大きいです。
エマニュエル・ルベツキはメキシコ出身の撮影監督で、2013年に本作でアカデミー賞の撮影賞を初めて取ると、翌年2014年の「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」、2015年の「レヴェナント: 蘇えりし者」で3年連続の受賞を果たしました。3年連続受賞は史上初だということです。
この映画の登場人物はほぼ二人だけです。
ジョージ・クルーニー演じるマット・コワルスキーと、サンドラ・ブロック演じるライアン・ストーン博士です。
特にマット・コワルスキーの役どころがこの映画をとても引き立たせています。どんな状況でも冷静で、人をくったようなキャラですが、こうした人間でなければ、宇宙空間ではダメなのかもしれないと感じさせます。
あらすじ/ストーリー
デブリ
地表から600km上空。
メディカル・エンジニアのライアン・ストーン博士と宇宙飛行士のマット・コワルスキーとシャリフは、スペースシャトル「エクスプローラー号」の船外でハッブル宇宙望遠鏡の修理作業を行っていた。
ライアン博士はデータ送信を試みるが、何度試みても地上にデータが送信されない。故障の原因が分からないでいた。
一方、マットは新型の船外活動ユニットのテストを行っていた。
NASAのあるヒューストンから、連絡が入った。ロシアが自国の衛星を破壊したところ、デブリ(宇宙ゴミ)が発生したというものだった。軌道上、デブリの影響はないというので、引き続き船外活動が続いた。
だが、ほどなくして避難指示が出た。デブリが他の衛星を破壊し、軌道上に時速3万2000kmの高速で大量のデブリがやってくることが分かったためだ。
マットはライアン博士に即時作業の中止を指示したが、ライアン博士は、あと少しだけ作業を続けたいと希望した。
だが、デブリの到達の方が早かった。
「エクスプローラー号」をデブリが襲ってきた。「エクスプローラー号」は大破し、シャリフは即死。
ライアン博士とマットは宇宙空間に投げ出される。
ライアン博士はカラダがくるくる回って自分の位置が分からなくなっていた。パニックになり、呼吸が速くなり酸素残量を消耗してしまった。
マットからの無線が入ってきた。マットの冷静な指示のおかげでなんとかマットと合流できた。
ISS(国際宇宙ステーション)へ
マットはヒューストンに連絡するが、通信衛星が破壊されてしまったため、応答がない。だが、あきらめずにマットは淡々と更新し続けた。
マットはライアン博士を引っ張りながら、シャリフの遺体を回収して「エクスプローラー号」に帰還したが、コックピットや居住区画も大破していた。
マットとライアン博士は「エクスプローラー号」を諦め、マットの船外活動ユニットを利用してISS(国際宇宙ステーション)に向かうことにした。
ライアン博士の宇宙服の酸素が減っていく。
マットはライアン博士を励ますために家族の話を聞いた。ライアン博士の娘は4歳の時に幼稚園で事故死したという。
ようやく二人がISSに到着するも、ISSも破損しており、地球帰還のためのソユーズは1機がすでに離脱していた。残る1機も損傷してパラシュートが開いてしまっている。
マットはソユーズを利用し中国の宇宙ステーション『天宮』へ向かうことを決心し、ISSに取り付こうとしたが、マットの船外活動ユニットは燃料切れで細かい調整ができない。
二人はISSに衝突して反動で宇宙空間に放り出されてしまう。
ライアン博士の足がパラシュートのワイヤーに引っかかり、マットに繋がっているロープを掴んだ。
だが、マットはロープを離すよう指示した。そうしないと二人とも宇宙に放り出されてしまう。
マットはロープのフックを外して宇宙空間を漂流し始めた。マットは通信が途切れるまでライアン博士に語り続けた。
天宮へ
ISSに入り込んだライアン博士はすぐにマットを救出するために交信をはじめたが応答がない。生き残ったのは自分一人だけ。
マットとの最期の約束は生きて地球に戻ること。
ライアン博士はそのための準備を始めたが、ISSで火災が発生した。消火活動の甲斐もなく爆発が起きてしまう。
ソユーズに退避して、ソユーズをISSから離脱させようとしたが、開いていたパラシュートのワイヤーがISSに絡まってしまって、うまく離脱ができない。
ライアン博士は船外に出てパラシュートを外しはじめたが、再びデブリが高速で襲来してきてISSを大破させてしまった。
船内に戻ったライアン博士はソユーズを発進させようとするが、燃料を使い果たしてしまったためエンジンが作動しない。
絶望の中、AM無線で救助を求めると電波を拾ったが、それは地球の電波だった。繋がったのはアニンガ。アニンガは赤ん坊をあやしていた。ライアン博士は娘を思い出していた。
ライアン博士は死を覚悟し、船内の酸素供給を止めた。
すると、ソユーズの窓を外からノックする音が聞こえた。あろうことか、マットだった。マットは船内に入り、着陸時の逆噴射装置を利用して『天宮』までの推進力とするのだと指示した。
マットは幻だった。
ライアン博士は酸素供給を再開させ、逆噴射エンジンを作動させて『天宮』に向かった。
生還
『天宮』に近づいたタイミングでライアン博士はソユーズを出て『天宮』にしがみついた。
そして宇宙船『神舟』に乗り込んだ。中国語で表記されていたため、困惑したが、基本的にはソユーズと一緒だ。
そして、大気圏に突入した。
映画情報(題名・監督・俳優など)
ゼロ・グラビティ
(2013年)
監督:アルフォンソ・キュアロン
脚本:アルフォンソ・キュアロン,ホナス・キュアロン
撮影:エマニュエル・ルベツキ
音楽:スティーヴン・プライス
出演:
ライアン・ストーン/サンドラ・ブロック
マット・コワルスキー/ジョージ・クルーニー
声の出演:
エド・ハリス
映画賞など
第71回ゴールデングローブ賞
- 監督賞
第67回英国アカデミー賞
- 監督賞
- 撮影賞
- 英国作品賞
- 作曲賞
- 音響賞
- 特殊視覚効果賞
第86回アカデミー賞
- 監督賞
- 作曲賞
- 音響編集賞
- 録音賞
- 撮影賞
- 視覚効果賞
- 編集賞