(映画)ライラの冒険/黄金の羅針盤(2008年)の考察と感想とあらすじは?

この記事は約6分で読めます。
記事内に広告が含まれています

物語の舞台となるのはパラレルワールドのイギリス、オックスフォードです。

この世界では誰もが動物の形をしたダイモンと呼ばれる自分の分身と共に生きています。

パラレルワールドということになっているのですが、どうやら、あちらの世界の方が何かとすすんでいるようです。

動力源不明の「馬車」や、快適に飛行しているように見える飛行船…などなど。映像は綺麗だし、期待させる出だしです。

やや興ざめだったのは、最初のテロップで、本作品は3部作品の第1作目である、と宣言した点です。

映画会社としては、「あと2作品撮るから、よろしくねぇ」とでも言いたいのでしょうか?

主人公は12歳の少女ライラ・ベラクア。

そして、ライラのダイモンはパンタライモン。

少女のライラのダイモンはかたちが定まっていません。

大人になるとダイモンのかたちは定まるのですが、まだ不安定に色んなものに変化します。

この色んなものになめらかに変化していく様子は見物です。一方で鬱陶しいと思う人もいるかもしれません。

ライラは幼いころに両親を亡くし、オックスフォード大学のジョーダン学寮で育てられています。

おじのアスリエル卿がライラの教育のために入れたのです。

もっとも奔放なライラを普通の家庭にあずけて育てるのは無理だからという思惑もあったのでしょう。

そんなことはお構いなしに、ライラは親友のロジャーたちと騒がしい毎日を送っていました。

そんなライラの毎日が一変します。

子供たちが次々と連れ去られ、ついには親友ロジャーまでもが姿を消してしまったのです。

ロジャーが消えたことを知らないライラ自身もコールター夫人に連れられジョーダン学寮から旅立つことになります。

もっともすぐにロジャーがいなくなったことを知るのですが。

子どもが連れ去られて、その子どもたちを子どもが救い出すというのは、やはり児童文学であるから仕方のないことではあります。

このノリで行くと、おそらくライラが世界を救うという風になるのでしょうか?

そして、その旅立ちの日、ライラは学寮長から「黄金の羅針盤」を渡されます。

この「黄金の羅針盤」は使う人が思い願ったことを告げてくれるのだそうです。

ですが、正当な持ち主でなければ、正しい返事をしてくれないという設定のようです。

重要なアイテムが特定の人物に結びつけられるというのはファンタジーの王道です。

そうそう、この「ライラの冒険」シリーズというのは「魔法」が出てきません。

魔法が出てこなければファンタジーじゃないと思っている人にとっては、物足りないでしょう。

もしかしたら、ファンタジーではないと感じるのかも知れませんが…

ですが、しゃべるクマがでてきますし、空を飛ぶ魔女も登場しますから、「魔法」好きのファンタジー・ファンも納得なのではないでしょうか?

2時間弱の映画ですが、映画の長さは感じさせません。

逆に、長くした方がよかったのではないかとすら思います。

というのは、(原作を知らないのですが)だいぶ端折っているのではないかと思えるからです。

脚本の時点で端折ったのか、それとも公開前にカットした場面が多かったのか(後者ではないかと思いますが…)、いずれにしても、ストーリーの展開に無理があるからです。

ストーリーを追うことは出来ますが、展開がものすごく速いため、その展開の速さにまぎれて、ストーリー展開がおかしいことを見過ごしがちです。

一例を挙げましょう。

アスリエル卿が、「ダスト」の秘密を探るために北へ行きます。

その前に、大学で報告を行うのですが、その報告が終わったあとから、北へ向かうまでの間に、「なにかがあったはず」です。

そして、北へ向かったアスリエル卿が捕らえられることになるのですが、捕らえられた後で何があったのか明確にされていません。

極めつけは、こうしたことが、「ストーリー上何か関係があるのか?」ということです。

まったくライラの行動には関わっていないように思えます。

おそらく、アスリエル卿の一連の行動は、何らかの意味を持ち、それがライラの行動にも関連しているのでしょうが、映画を見ている限り、独立したバラバラの話となっており、登場している意味が分かりません。

普通ならカットです。

他にもおかしい点が結構あります。それは、コールター夫人の行動についてもそうです。

展開がおかしなことになっているのは、おそらくはカットのしすぎのせいではないかと思います。

ディレクターズカットが存在するなら、是非そちらを見てみたいものです。

それにしても、あの終わり方はまずいです…。

最初に「あと2作品撮るから、よろしくねぇ」と宣言して、終わり方も続きがありますよ的なのは、如何と思いますが?

この年に公開された映画やドラマを下に方に載せておりますので、ご参考になさってください。

映画情報(題名・監督・俳優など)

ライラの冒険 黄金の羅針盤
(2008)

監督:クリス・ワイツ
原作:フィリップ・プルマン
「黄金の羅針盤」
脚本:クリス・ワイツ
撮影:ヘンリー・ブラハム
視覚効果スーパーバイザー: マイケル・フィンク
衣装デザイン: ルース・マイヤーズ
音楽:アレクサンドル・デスプラ

出演:
ライラ・ベラクア/ダコタ・ブルー・リチャーズ
コールター夫人/ニコール・キッドマン
アスリエル卿/ダニエル・クレイグ
リー・スコーズビー/サム・エリオット
セラフィナ・ペカーラ/エヴァ・グリーン
第一評議員/クリストファー・リー
ファーダー・コーラム/トム・コートネイ
教権の密使/デレク・ジャコビ
ロジャー/ベン・ウォーカー
フラ・パベル/サイモン・マクバーニー
ファー統領/ジム・カーター
マ・コスタ/クレア・ヒギンズ
学寮長/ジャック・シェパード
家政婦ロンズデール/マグダ・ズバンスキー
ビリー・コスタ/チャーリー・ロウ
声の出演:
イオレク・バーニソン/イアン・マッケラン
パンタライモン/フレディ・ハイモア
ラグナー・スタールソン/イアン・マクシェーン
ステルマリア/クリスティン・スコット・トーマス
ヘスター/キャシー・ベイツ

続編情報

2007年に公開された映画『ライラの冒険 黄金の羅針盤』の続編の製作が断念された。

興業成績が悪かったが、その理由が、次の通りとは、いやはやなんとも…

カトリック系の宗教団体である北米カトリック連盟が、この映画が子どもたちに無神論を勧めているとして、劇場へ行かないよう、またプルマンの原作を読まないようボイコット運動を呼びかけたことから、アメリカでは思ったほど興業成績が伸びなかった。

挙句の果てに、

北米カトリック連盟は「とても喜ばしい。興業成績が良くなければ続編の製作に影響するとわかっていた」とボイコットの成果を称えている。

これは許されて、北朝鮮の妨害は表現の自由を侵害すると主張する国。どうよ?

2008年前後の興行収入ランキング

歴代の興行収入ランキング

  1. 日本歴代興行収入ランキング(Top100)
  2. 世界歴代興行収入ランキング(Top200)

2008年公開の映画

(映画)僕の彼女はサイボーグ(2008年)の考察と感想とあらすじは?

きっと彼女は、もう一つの「ターミネーター」なのでしょう。その登場の仕方といい、未来から主人公を守りに来たという設定といい、近い将来に街が壊滅的な打撃を受ける点といい、よく似ています。

(映画)スラムドッグ$ミリオネア(2008年)の考察と感想とあらすじは?

社会性を前面に押し出した、いわゆる重い映画というのは数多くある。この映画が、こうした重い映画と異なるのは、一筋の希望を観客に与えている点だろう。そこが、各国で映画賞を総なめした最大の理由なのだろうか、と見終わって感じた。

(映画)山桜(2008年)の考察と感想とあらすじは?
原作のイメージぴったりというわけではないですが、かなり忠実に映画化されています。原作はかなり短い短編なので、一読してから見てもいいと思います。この短編を読めばわかりますが、ラストシーンがとても重要です。というより、このラストシーンのために全てがある作品です。
(映画)20世紀少年1 終わりの始まり(2008年)の考察と感想とあらすじは?

浦沢直樹氏の「20世紀少年」を映画化。自身が初期段階から脚本に参加している。映画は原作とは異なるストーリー展開となっているそうだ。

(映画)容疑者Xの献身(2008年)の考察と感想とあらすじは?

真の主人公と言ってもよい石神役の堤真一のうらぶれた高校教師姿はよかった。極めて影が薄いように演じているところも良い。

(映画)ハッピーフライト(2008年)の考察と感想とあらすじは?

飛行機の中だけを舞台にしているわけではない。裏で支えるグランドスタッフ、整備士、管制官、ディスパッチャー、バードパトロールを描いているのが見どころの一つだろう。

(映画)ドラゴン・キングダム(2008年)の考察と感想とあらすじは?

原題は「THE FORBIDDEN KINGDOM」。中国語題は「功夫之王』。ジャッキー・チェンとジェット・リーが初共演したアドベンチャー武侠カンフー映画。

(大河ドラマ)篤姫(全話)の考察と感想とあらすじは?(主人公:天璋院篤姫)
2008年のNHK大河ドラマ「篤姫」の紹介です。激動の幕末期を江戸城の無血開城を迎えるまで大奥を束ねた篤姫(天璋院)の生涯を描きます。薩摩藩の分家から本家の養女となり、ついには将軍の御台所となり、幕末の動乱を乗り越え、徳川の家名を守り抜いた数奇な運命を辿りました。
(映画)20世紀少年2 最後の希望(2008年)の考察と感想とあらすじは?

物語は新たな展開を迎える。「よげんの書」につづいて「しんよげんの書」が出てくるのだ。それはケンヂたちが考えたストーリーの続きだった。

(映画)007 慰めの報酬(2008年)の考察と感想とあらすじは?
007シリーズ22作目。ダニエル・クレイグ版ジェームズ・ボンドの2作目。 「007 カジノ・ロワイヤル」から1時間後の設定。映画本編はシリーズ初の続編だそうです。 本作では陸・海・空のチェイスが一つの見どころです。 しょっぱなからカーチェイ...
(映画)マンマ・ミーア!(2008年)の考察と感想とあらすじは?

一組のアーティストの曲だけで構成するという構成は、ミュージカル映画としては、アリだと思った。ABBAの曲で映画を作るというのは、挑戦的だが、曲の雰囲気や流れという点での違和感が少ないというメリットがある。ただ、惜しむらくは、流す曲の順番を考えてほしかった。

(映画)ICHI(2008年)の考察と感想とあらすじは?

子母澤寛(しもざわ かん)の「座頭市物語」が原作。今回は「市」の設定を女性にして、孤高を貫き生きる女、初めて出会った運命の男との切ない恋の行方を描く。

(映画)レッドクリフ PartI(2008年)の考察と感想とあらすじは?

三国志演義をベースにした「赤壁の戦い」を中心に描いた映画。歴史スペクタクル映画と言いたい所だが...。残念だが、映画史上に残る名作ではない。過去の名作と比べてしまうと、どうもねぇ。

(映画)トワイライト・サーガ1 トワイライト-初恋-(2008年)の考察と感想とあらすじは?

シリーズ1作目。ステファニー・メイヤーの世界的ベストセラー小説を映画化。10代の女の子を中心に人気があるシリーズで、人間とヴァンパイアが恋に落ちるファンタジー・ロマンス。

(映画)ベンジャミン・バトン 数奇な人生(2008年)の考察と感想とあらすじは?

映画の中で「永遠てないんだな」という趣旨のセリフがたびたび登場する。この映画を端的に表しているわけではないが、映画の一部分を表現した印象的なセリフである。

(映画)ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝(2008年)の考察と感想とあらすじは?

全くといっていいほど、ジェット・リーのアクションが見られない。わざわざジェット・リーを使う必要があったのか?と正直考え込んでしまった。

(映画)陰日向に咲く(2008年)の考察と感想とあらすじは?

劇団ひとりの大ヒット小説「陰日向に咲く」の映画化。5編のオムニバス形式の原作を、組み合わせて実写化している。シンヤと鳴子を中心に映画は進んでいき、様々な人間の人生が交錯していくが、映画の中で全く他の人間たちと交錯しない登場人物がいる。

(映画)オーストラリア(2008年)の考察と感想とあらすじは?

題名から18世紀後半のいわゆる植民地として入植がはじまったころ、もしくは、その後の19世紀初頭を描いている映画かと思ってしまったorz。

(映画)隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS(2008年)の考察と感想とあらすじは?

「Star Wars」から影響を受けた「隠し砦の三悪人」に淡い恋物語をブレンドしたといった感じ?ダースベーダーもどきの鷹山刑部の登場には白けた。後半に登場する山名の砦はさしずめデススターだろう。

(映画)おくりびと(2008年)の考察と感想とあらすじは?

静謐(せいひつ)という言葉がある。一般的には、おだやかで、しずかで、物音がしない様子をいうが、心の静けさ、気持ちの安定、落ち着き、穏やかさ、心地よさといった心の平安を意味する言葉

(映画)インディ・ジョーンズ4-クリスタル・スカルの王国(2008年)の考察と感想とあらすじは?

「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」から19年後の1957年が舞台となっている。「レイダース-失われた聖櫃(アーク)」の最後のシーンを覚えているだろうか?聖櫃(アーク)がある巨大倉庫に運び込まれていくシーンだが、今回はその巨大倉庫から始まる。

(映画)ザ・マジックアワー(2008年)の考察と感想とあらすじは?

写真・映画用語で「マジックアワー」とは、日没後の「太陽は沈み切っていながら、まだ辺りが残光に照らされているほんのわずかな、しかし最も美しい時間帯」を指す。

(映画)ナルニア国物語/第2章カスピアン王子の角笛(2008年)の考察と感想とあらすじは?

前作「ライオンと魔女」から1,300年の歳月が流れたナルニア。角笛(前作でスーザンがサンタクロースから贈られた魔法の角笛)に呼ばれて四人兄弟が再びナルニアへ呼ばれる。

タイトルとURLをコピーしました