「非常に不愉快な物語なので、ハッピー・エンドの映画を観たいならば隣の劇場へ」というメッセージから始まる異色のファンタジー映画です。
原作は世界40言語に翻訳され、3000万部を売り上げたベストセラー小説。
幼いボードレール三姉弟妹をひたすら不運が襲う、まさに「不幸せな物語」です。
「不幸せな物語」となっていますので、救いのない悲惨で不幸が連続する映画なのかと思いきや、そうではありません。
三姉弟妹がたくましいのと、敵役のオラフ伯爵が、何となく憎めない間抜けさを持ち合わせているためかもしれません。
ファンタジー映画らしくなってるのは映像の力もあります。
クラシックというほど昔でもないですが、レトロを感じさせるくらいに昔を感じさせる映像です。
そのレトロな感じが微妙に現実とは離れていることを感じさせ、これがファンタジー映画であることを思い出させてくれます。
また、この映像にあわせる音楽がかなり良いです。音楽はトーマス・ニューマンが担当しました。
コミカルというわけではないのですが、どことなくファニーな印象を与えつつも、ダークな一面を覗かせるのはトーマス・ニューマンならではです。
こうした映像と音楽が映画全体の雰囲気を上手く作り上げています。
さて、世にある様々な「不幸せな物語」は、読んでいたり観ていたりして心が痛むほどの不幸を経たあとに、ほんの少しの幸せを手に入れるのが常道です。
それで、涙を誘うのです。
この場合、ほんの少しの幸せであることが重要です。あまりにも大きな幸せを手に入れてしまうと、興ざめしてしまうからです。
本作の場合、どうでしょうか?
あらすじ/ストーリー/ネタバレ
ヴァイオレット(エミリー・ブラウニング)、クラウス(リアム・エイケン)、サニー(カラ・ホフマン、シェルビー・ホフマン)のボードレール三姉弟妹は裕福な両親に愛され、何一つ不自由なく生活していた。
14才の長女ヴァイオレットは天才発明家。智恵とひらめきで日常の発明品を作るのが大好き。長い髪が目に入らないようにギュッと結んでいる時は、彼女が何かの発明に熱中している印。
長男のクラウスは本の虫で、普通の人が一生かかっても読みきれない量の本をすでに読破している。。末っ子のサニーは噛むことが大好きな女の子で噛んだら放さない。そして言葉の代りに意味不明の言葉を口にする年頃だ。
ある日、海辺で遊んでいる三人のもとに、恐ろしい知らせが届く。
自宅が火事で全焼して、両親が死んでしまったというのだ。こうしてボードレールの三人は突然孤児となってしまった。
知らせを持ってきたのは銀行家であり資産管理人のミスター・ポー(ティモシー・スポール)。三人に残された莫大な財産はヴァイオレットが成長するまで使えず、三人は遠縁の親戚オラフ伯爵(ジム・キャリー)に預けられることになった。
役者であるオラフ伯爵は古い洋館に住んでいるが、伯爵は欲張りな極悪人。三人はすぐに伯爵が遺産を狙っていることに気づく。オラフは子供たちに山のような雑用を押しつけ、子供たちはけなげに雑用をこなしていく。
後見人としての正式な手続きを終えたとたん伯爵は子供たちを車の中に閉じこめ、列車のやってくる線路上に車を放置した。
汽車が迫ってきたが、クラウスの知識とヴァイオレットのとっさの発明、サニーの丈夫な歯に寄って辛くも窮地を脱したのだった。
そこにミスター・ポーが通りかかったが、伯爵の計画には気がつかずに、サニーに車を運転させたとして後見人の資格を剥奪する。
ひとまずオラフ伯爵の魔の手から逃れた三人が、次に預けられたのはモンティおじさん(ビリー・コノリー)の家。
爬虫類学者のモンティは子供たちが着くやいなやペルーに移住すると言い出す。一風変わったモンティに心を許し始めた三人だったが、ステファノと名乗る男がやってきて事態が変わる。
ステファノはオラフ伯爵の変装した姿であることを三人はすぐに見破った。だが、このステファノにモンティおじさんが殺されてしまう。
子供たちが次に連れてこられたのはジョセフィーンおばさん(メリル・ストリープ)のところだった。だが、ここにもシャム船長と名乗って、オラフ伯爵が現われる。
再びオラフ伯爵の屋敷に連れ戻された三姉弟妹。
婚姻関係がない限り金にならないことを知った伯爵は、ヴァイオレットと結婚式を挙げようと企む。だがクラウスの活躍で結婚式は潰れ、ついにオラフ伯爵は逮捕された。そして子供たちは、両親が彼らに宛てた手紙と望遠鏡を受け取るのだった。
映画情報(題名・監督・俳優など)
レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語
(2004)
監督:ブラッド・シルバーリング
製作:ローリー・マクドナルド、ウォルター・F・パークス
製作総指揮:アルビー・ヘクト、ジュリア・ピスター、スコット・ルーディン、バリー・ソネンフェルド、ジム・ヴァン・ウィック
原作:レモニー・スニケット 「世にも不幸なできごと1 最悪のはじまり」(草思社刊)
脚本:ロバート・ゴードン
音楽:トーマス・ニューマン
出演:
ヴァイオレット・ボードレール/エミリー・ブラウニング
クラウス・ボードレール/リーアム・エイケン
サニー・ボードレール/カラ・ホフマン
サニー・ボードレール/シェルビー・ホフマン
オラフ伯爵/ジム・キャリー
ジョセフィーンおばさん/メリル・ストリープ
ミスター・ポー/ティモシー・スポール
モンティおじさん/ビリー・コノリー
禿げ男/ルイス・ガスマン
白い顔の女/ジェニファー・クーリッジ
ストラウス判事/キャサリン・オハラ
警官/セドリック・ジ・エンターテイナー
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