記事内に広告が含まれています

(映画)おくりびと(2008年)の考察と感想とあらすじは?

この記事は約4分で読めます。

静謐(せいひつ)という言葉があります。

一般的には、おだやかで、しずかで、物音がしない様子をいいますが、心の静けさ、気持ちの安定、落ち着き、穏やかさ、心地よさといった心の平安を意味する言葉でもあります。

それに「謐」には静かに語るという意味合いもあります。

まさに、この映画は「静謐」そのものの映画です。

音楽もいいです。

チェロという低音域の出る楽器を使って、雰囲気がさらに良くなっています。

チェロの形というのも暗示的です。

それはどことなく人の形を連想させる楽器だからでしょう。

それをやさしく弾く主人公と、遺体を真摯に清める姿とに通じるものがあります。

この映画の登場人物にはそれぞれ明確な役割が与えられています。ある意味、暗示的でもあります。

銭湯のおばちゃん、そこの常連、納棺師の仕事に偏見を抱く銭湯の息子で主人公の同級生、そして、主人公の父親…。

映画の話の流れ上、最後に誰を清めて送り出すのかは早い段階でわかります。予定調和ではあるが、形式美の美しさがそこにあります。

この映画自体そのものが形式美なのかもしれません。それは納棺師が遺体を清めて納棺するまでの様々な所作にも表れています。

死とは禁忌であったがゆえに、儀式としての形式美が存在し、清浄化するという過程が培われてきました。

それが昇華されることによって、この映画のような荘厳な静謐の世界がもたらされるのでしょう。

惜しむらくは、主人公の妻役がもう少し感情豊かに表現できる女優であった方が良かったでしょう。

あらすじ/ストーリー/ネタバレ

チェロ奏者の大悟は、所属していた楽団の突然の解散を機に演奏家を諦め、妻と一緒に故郷の山形へ帰ることにした。

職探しをしていた大悟の目にとまった求人広告は「年齢問わず、高給保証!実質労働時間わずか。旅のお手伝い。NKエージェント!!」というものだった。

早速面接に向かった彼を待ち受けていたのは、なぜか棺桶が置いてある古びた事務所だった。ほどなく現れた社長の佐々木は、履歴書に目を通すこともなく大悟の顔を見るなり、一発で採用を決める。

旅行代理店だと思った仕事は、「旅立ち」をお手伝いする「納棺師」というものだった。

慌てる大悟だが、佐々木に言われるがまま引き受けてしまい、妻の美香には冠婚葬祭関係の仕事に就いたと答えてしまう。

晩秋の庄内平野。

新人納棺師としての日々がはじまった。

美人だと思ったらニューハーフだった青年、ヤンキーの女子高生、幼い娘を残して亡くなった母親、ルーズソックスを履いてみるのが憧れだったオバアチャン、沢山のキスマークで送り出される大往生のおじいちゃん…。

さまざまな死や別れと向き合ううちに、大悟は納棺師の仕事に理解を示すようになっていった。

そんな矢先、美香に本当のことがばれてしまい、彼女は「汚らわしい!」と言い残して実家に帰ってしまう。

彼女が離れていったことは大きなショックだったが、真摯な態度で仕事にのぞむ信念はゆるがず、彼は彼女が戻ってくるのを待つことにした。

庄内平野に春が訪れた。

納棺師として充足感と誇りを胸に刻みはじめていた大悟のもとに、さまざまな知らせが舞い込んできた。

美香の懐妊、幼馴染みの母親の死…

そして、30年間ゆくえ知らずだった父親の死…。

この年に公開された映画やドラマを下に方に載せておりますので、ご参考になさってください。

映画情報(題名・監督・俳優など)

おくりびと
(2008年)

監督: 滝田洋二郎
脚本: 小山薫堂
音楽: 久石譲

出演:
小林大悟 /本木雅弘
小林美香 /広末涼子
山下ツヤ子 /吉行和子
佐々木生栄 / 山崎努
上村百合子 / 余貴美子
平田正吉 / 笹野高史
山下 / 杉本哲太
小林淑希 / 峰岸徹
ツヤ子の孫娘 / 松田七星
佐々木が納棺した女性 / 宮田早苗
上記の女性の夫 / 山田辰夫
曽根崎 / 石田太郎
大悟が所属していたオーケストラの指揮者 / 飯森範親
小林和子 / 星野光代
留男 / 白井小百合
留男の母 / 小柳友貴美
留男の父 / 大谷亮介

2008年前後の興行収入ランキング

歴代の興行収入ランキング

  1. 日本歴代興行収入ランキング(Top100)
  2. 世界歴代興行収入ランキング(Top200)

2008年公開の映画

(映画)007 慰めの報酬(2008年)の考察と感想とあらすじは?
007シリーズ22作目。ダニエル・クレイグ版ジェームズ・ボンドの2作目。「007 カジノ・ロワイヤル」から1時間後の設定。映画本編はシリーズ初の続編だそうです。本作では陸・海・空のチェイスが一つの見どころです。しょっぱなからカーチェイスで、...
(映画)ドラゴン・キングダム(2008年)の考察と感想とあらすじは?

原題は「THE FORBIDDEN KINGDOM」。中国語題は「功夫之王』。ジャッキー・チェンとジェット・リーが初共演したアドベンチャー武侠カンフー映画。

(映画)スラムドッグ$ミリオネア(2008年)の考察と感想とあらすじは?

社会性を前面に押し出した、いわゆる重い映画というのは数多くある。この映画が、こうした重い映画と異なるのは、一筋の希望を観客に与えている点だろう。そこが、各国で映画賞を総なめした最大の理由なのだろうか、と見終わって感じた。

(映画)陰日向に咲く(2008年)の考察と感想とあらすじは?

劇団ひとりの大ヒット小説「陰日向に咲く」の映画化。5編のオムニバス形式の原作を、組み合わせて実写化している。シンヤと鳴子を中心に映画は進んでいき、様々な人間の人生が交錯していくが、映画の中で全く他の人間たちと交錯しない登場人物がいる。

(映画)20世紀少年2 最後の希望(2008年)の考察と感想とあらすじは?

物語は新たな展開を迎える。「よげんの書」につづいて「しんよげんの書」が出てくるのだ。それはケンヂたちが考えたストーリーの続きだった。

(映画)トワイライト・サーガ1 トワイライト-初恋-(2008年)の考察と感想とあらすじは?

シリーズ1作目。ステファニー・メイヤーの世界的ベストセラー小説を映画化。10代の女の子を中心に人気があるシリーズで、人間とヴァンパイアが恋に落ちるファンタジー・ロマンス。

(映画)ICHI(2008年)の考察と感想とあらすじは?

子母澤寛(しもざわ かん)の「座頭市物語」が原作。今回は「市」の設定を女性にして、孤高を貫き生きる女、初めて出会った運命の男との切ない恋の行方を描く。

(映画)僕の彼女はサイボーグ(2008年)の考察と感想とあらすじは?

きっと彼女は、もう一つの「ターミネーター」なのでしょう。その登場の仕方といい、未来から主人公を守りに来たという設定といい、近い将来に街が壊滅的な打撃を受ける点といい、よく似ています。

(映画)隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS(2008年)の考察と感想とあらすじは?

「Star Wars」から影響を受けた「隠し砦の三悪人」に淡い恋物語をブレンドしたといった感じ?ダースベーダーもどきの鷹山刑部の登場には白けた。後半に登場する山名の砦はさしずめデススターだろう。

(映画)レッドクリフ PartI(2008年)の考察と感想とあらすじは?

三国志演義をベースにした「赤壁の戦い」を中心に描いた映画。歴史スペクタクル映画と言いたい所だが...。残念だが、映画史上に残る名作ではない。過去の名作と比べてしまうと、どうもねぇ。

(映画)山桜(2008年)の考察と感想とあらすじは?
原作のイメージぴったりというわけではないですが、かなり忠実に映画化されています。原作はかなり短い短編なので、一読してから見てもいいと思います。この短編を読めばわかりますが、ラストシーンがとても重要です。というより、このラストシーンのために全てがある作品です。
(映画)20世紀少年1 終わりの始まり(2008年)の考察と感想とあらすじは?

浦沢直樹氏の「20世紀少年」を映画化。自身が初期段階から脚本に参加している。映画は原作とは異なるストーリー展開となっているそうだ。

(映画)インディ・ジョーンズ4-クリスタル・スカルの王国(2008年)の考察と感想とあらすじは?

「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」から19年後の1957年が舞台となっている。「レイダース-失われた聖櫃(アーク)」の最後のシーンを覚えているだろうか?聖櫃(アーク)がある巨大倉庫に運び込まれていくシーンだが、今回はその巨大倉庫から始まる。

(映画)マンマ・ミーア!(2008年)の考察と感想とあらすじは?

一組のアーティストの曲だけで構成するという構成は、ミュージカル映画としては、アリだと思った。ABBAの曲で映画を作るというのは、挑戦的だが、曲の雰囲気や流れという点での違和感が少ないというメリットがある。ただ、惜しむらくは、流す曲の順番を考えてほしかった。

(映画)容疑者Xの献身(2008年)の考察と感想とあらすじは?

真の主人公と言ってもよい石神役の堤真一のうらぶれた高校教師姿はよかった。極めて影が薄いように演じているところも良い。

(映画)ハッピーフライト(2008年)の考察と感想とあらすじは?

飛行機の中だけを舞台にしているわけではない。裏で支えるグランドスタッフ、整備士、管制官、ディスパッチャー、バードパトロールを描いているのが見どころの一つだろう。

(映画)オーストラリア(2008年)の考察と感想とあらすじは?

題名から18世紀後半のいわゆる植民地として入植がはじまったころ、もしくは、その後の19世紀初頭を描いている映画かと思ってしまったorz。

(映画)ベンジャミン・バトン 数奇な人生(2008年)の考察と感想とあらすじは?

映画の中で「永遠てないんだな」という趣旨のセリフがたびたび登場する。この映画を端的に表しているわけではないが、映画の一部分を表現した印象的なセリフである。

(映画)ナルニア国物語/第2章カスピアン王子の角笛(2008年)の考察と感想とあらすじは?

前作「ライオンと魔女」から1,300年の歳月が流れたナルニア。角笛(前作でスーザンがサンタクロースから贈られた魔法の角笛)に呼ばれて四人兄弟が再びナルニアへ呼ばれる。

(映画)ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝(2008年)の考察と感想とあらすじは?

全くといっていいほど、ジェット・リーのアクションが見られない。わざわざジェット・リーを使う必要があったのか?と正直考え込んでしまった。

(大河ドラマ)篤姫(全話)の考察と感想とあらすじは?(主人公:天璋院篤姫)
2008年のNHK大河ドラマ「篤姫」の紹介です。激動の幕末期を江戸城の無血開城を迎えるまで大奥を束ねた篤姫(天璋院)の生涯を描きます。薩摩藩の分家から本家の養女となり、ついには将軍の御台所となり、幕末の動乱を乗り越え、徳川の家名を守り抜いた数奇な運命を辿りました。
(映画)ザ・マジックアワー(2008年)の考察と感想とあらすじは?

写真・映画用語で「マジックアワー」とは、日没後の「太陽は沈み切っていながら、まだ辺りが残光に照らされているほんのわずかな、しかし最も美しい時間帯」を指す。

(映画)ライラの冒険/黄金の羅針盤(2008年)の考察と感想とあらすじは?

パラレルワールドということになっているが、どうやら、あちらの世界の方が何かとすすんでいるようである。動力源不明の「馬車」や、快適に飛行しているように見える飛行船...などなど。映像は綺麗だし、期待させる出だしである。

タイトルとURLをコピーしました