感想/コメント
築城わずか三年で焼失してしまったゆえに「幻の城」といわれる安土城。その建設秘話を書いた山本兼一氏の小説「火天の城」を映画化。
安土城の築城に携わった職人たちの物語。天主を担当した岡部又右衛門以言、岡部又兵衛以俊の親子を主人公としています。
安土城はその図面が残っていないがゆえに、どのような城だったのかが今なお不明な点が多いです。最近の研究で少しずつ、こうではなかったのかと、というのが分かってきています。
映画は、ベテラン俳優陣がキャスティングされており、安心して見ていられます。少々かわいそうだったのが、凛と市造の二人。他の演技者に負けて、浮いています。
良かったのは、城作りに没頭する又右衛門を常に微笑みながら支える妻・田鶴役の大竹しのぶです。
特に印象深いセリフがあります。それは、部下の大工たちの心を束ねられない苦悩に苛まれる又右衛門が、田鶴に八つ当たりした時のセリフです。
また、杣人頭(そまびとかしら)を演じた緒方直人の演技も良かったです。気迫あふれる演技と、しみじみとしたナレーションはいいアクセントでした。
見ものは、淡路島に2万平方メートルの原寸大の敷地に数万本の丸太で足場を組むオープンセットです。
東映京都撮影所のセット撮影では、安土城の地下蔵作事場や安土城の天主内を見事に再現しました。このセットには、一本数百万円の檜を惜しむことなく使用したそうです。
他に、撮影は京都周辺、木曽福島、台湾行われました。
原作の紹介は「時代小説県歴史小説村」で。山本兼一の火天の城。「白鷹伝」から始まり「火天の城」「雷神の筒」と続く「信長テクノクラート三部作」の一作品。この作品で山本兼一氏は第11回松本清張賞を受賞しています。
あらすじ/ストーリー/ネタバレ
安土桃山時代。天正四年(1576年)、ある日突然、熱田の宮番匠・岡部又右衛門のもとに織田信長自ら出向いてきた。
信長の命はただ一つ。
安土の山をまるごとひとつ、三年で城とせよ。その象徴とでもいうべき五層の天守を建てよ。
信長の、できるか?の問いに、岡部又右衛門は、つくりまする、と返事をした。
四層まで吹き抜けの設計とせよ、という信長の指示に対して、岡部又右衛門は返答を渋った。それを見た信長は安土の城を仕切る者は指図(図面)争いにおいて決めると言い放つ。
又右衛門と指図争いをするのは、金閣寺を建立した京の池上家、奈良の大仏殿建造を担った中井一門。
指図争いの場においても、又右衛門は確固とした信念のもと、吹き抜けの設計をはねのけた。激怒する信長を前にしても信念は揺るがず、信長を納得させ総棟梁となる。
四万点にも及ぶ部品が必要となる安土城はまさに「化け物」である。この巨城を支えるためには主柱に、これまでになく巨大な檜が必要であった。
又右衛門はその巨大な檜を探し求めるため、織田家の敵地・武田家家臣の木曽義昌の領地に足を踏み入れた。
そこで出会った杣人頭の大庄屋甚兵衛は死を覚悟してなお巨木を追い求める又右衛門の情熱に心を動かされ、巨木の提供を約束した。
安土に帰った又右衛門は、ひたすら甚兵衛からの巨木を待ちわびていた。だが、門下の大工たちはいつまでたっても届かぬ巨木に不安を募らせた。
門下の大工たちの心が自分から離れそうな様子を見て、人を束ねることのむずかしさを噛みしめる又右衛門。その夫を微笑みながら見守る妻・田鶴と娘・凛。
そして、ついに約束通りの巨木が着いた。だが、この巨木の運搬には甚兵衛の覚悟があった…。
安土城は段々とその姿を見せ始めた。
その中、蛇石の運搬が始まった。だが、このさなかで悲劇が起きる…。
映画情報(題名・監督・俳優など)
火天の城
(2009年)
監督: 田中光敏
プロデューサー: 進藤淳一
藤田重樹
製作総指揮: 河端進
ゼネラルプロデューサー: 河端勲
原作: 山本兼一
脚本: 横田与志
音楽: 岩代太郎
主題歌: 中孝介 『空が空』
VFXスーパーバイザー: 田口健太郎
出演:
岡部又右衛門/西田敏行
岡部凛/福田沙紀
岡部田鶴/大竹しのぶ
平次/寺島進
熊蔵/山本太郎
市造/石田卓也
弥吉/上田耕一
太助/ペ・ジョンミョン
留吉/前田健
ふさ/ 熊谷真実
うね/水野美紀
織田信長/椎名桔平
丹羽長秀/西岡徳馬
木村次郎左衛門/渡辺いっけい
羽柴秀吉/河本準一
堺の豪商/遠藤章造
中川左内/田口浩正
中井孫太夫/内田朝陽
池上五郎右衛門/石橋蓮司
木曾義昌/笹野高史
戸波清兵衛/夏八木勲
大庄屋甚兵衛/緒形直人