感想/コメント
アカデミー賞作品賞を受賞しました。受賞は英国王室への敬意からではないかと感じた映画です。
受賞の要素は他にもあります。第二次世界大戦前夜、ナチス・ドイツとの戦争が決まったイギリス国民を鼓舞した国王が主人公です。
これまで取り上げられることが少なかった側面を映画化したのも評価されたのかもしれません。
主人公は吃音に悩まされたイギリス王ジョージ6世(=ヨーク公アルバート王子)。実際は映画ほどの吃音ではなかったようです。コリン・ファースが演じました。
そして、もう一人の主人公がオーストラリア出身の言語療法士・ライオネル・ローグ。ジェフリー・ラッシュが演じました。癖のある演技が秀逸でした。
この二人に、時折エリザベス妃演じるヘレナ・ボナム・カーターが登場して彩を添えます。
言語療法士と書きましたが、日本の資格名称では言語聴覚士。略称はST。Speech-Language-Hearing Therapistの略。
映画でも描かれているように、心因性の治療も行うため、心理学も学ばなければなりません。
日本では4年制の大学を中心に受験資格を得られますが、アメリカなどの海外ではより専門性の高い大学院修了を義務づけている国もあります。
知的な職業とみなされているためでしょう。単なるセラピストではないということです。
あらすじ/ストーリー
始まりは、1925年の大英帝国博覧会閉会式。
後のジョージ6世となるヨーク公アルバート王子は父ジョージ5世の代理として演説を行ったが、吃音症のために悲惨な結果に終わった。
ヨーク公アルバート王子は吃音症を治すため、様々な治療を受けるが、どれも効果が得られない。その中、エリザベス妃は様々なルートから言語療法士のライオネル・ローグの存在を知り、一縷の望みをかけることにする。
いろんな治療を受けても改善しないことにいら立つアルバート王子はエリザベス妃が見つけてきたライオネル・ローグの治療を受ける気がしない。それを何とか説得して治療を受けさせた。
だが、ライオネル・ローグは無作法だった。ローグはアルバート王子に、賭けを持ちかけた。シェイクスピアの「ハムレット」をよどむことなく読めるかどうか。ローグは音楽が流れるヘッドホンをつけさせ、アルバート王子が自分の声が聞こえないようにした。そして、朗読をレコードに録音した。
途中で腹を立てて帰るアルバート王子に、録音したレコードを持たせた。帰ってしばらくしてからアルバート王子はレコードを聴いた。そして驚いた。よどみなく読んでいたからだ。
アルバート王子は再びライオネル・ローグを訪れ、治療を再開した。治療は独特だった。口の筋肉をリラックスさせる練習や、呼吸の訓練、発音の練習などを繰り返し行う。
アルバート王子は幼いころの思い出を話した。もともと左利きだったが、強制的に直されたこと。乳母に虐待されたこと。吃音を馬鹿にされたこと。弟ジョン王子の死去など…。アルバート王子とライオネル・ローグの心的距離が徐々に縮まっていった。
1936年1月、ジョージ5世が崩御した。デイヴィッド王子が「エドワード8世」として国王に即位する。
即位に伴って問題が起きた。新王が結婚を望んだウォリス・シンプソン夫人はアメリカ人で、離婚歴があるだけでなく2番目の夫といまだ婚姻関係にあった。国王の結婚相手としては相応しくなかった。
王室に大きなスキャンダルを巻き起こすことが分かっていた。アルバート王子は兄エドワード8世に分別を求めたが、エドワード8世は聞く耳を持たない。
エドワード8世はウォリスとの結婚を諦めきれなかった。だが、スタンリー・ボールドウィン首相やウィンストン・チャーチル元海軍大臣らは反対した。これをうけ即位して1年も満たぬうちに退位した。
アルバート王子がジョージ6世として即位することになった。アルバート王子は国王の重責に押しつぶされそうだった。国王になるのですら重圧なのに、ヨーロッパ大陸では、アドルフ・ヒトラー率いるナチ党政権下のドイツとの戦争が目前に迫っていた。
ジョージ6世として即位したら、国民を鼓舞する演説を行うことになっている。だが、ジョージ6世の吃音症は依然として深刻なままだった。ジョージ6世は再びローグを訪ね治療を再開する。
戴冠式に備えるジョージ6世は、ローグにはなんの医療資格も持たないことを知る。カンタベリー大主教コスモ・ラングは、ローグを国王から遠ざけようと試みるが、国王はローグを臨席させると譲らない。戴冠式での宣誓は滞りなく進行し、ジョージ6世はその様子をニュース映画で家族とともに観る。
ボールドウィン首相の後を継いだネヴィル・チェンバレン首相の宥和政策は失敗した。1939年9月1日のドイツのポーランド侵攻を受けて、9月3日に英国はドイツに宣戦布告した。第二次世界大戦が始まる。
ジョージ6世は大英帝国全土に向けて国民を鼓舞する演説を、緊急ラジオ放送で行った。ジョージ6世は、ローグと二人きりの放送室で完璧な演説をこなした。
映画情報(題名・監督・俳優など)
英国王のスピーチ
(2010年)
監督 / トム・フーパー
製作 / イアン・カニング,エミール・シャーマン,ギャレス・アンウィン
製作総指揮 / ジェフリー・ラッシュ,ティム・スミス,ポール・ブレット,マーク・フォリーニョ,ハーヴェイ・ワインスタイン,ボブ・ワインスタイン
脚本 / デヴィッド・サイドラー
撮影 / ダニー・コーエン
プロダクションデザイン / イヴ・スチュワート
衣装デザイン / ジェニー・ビーヴァン
編集 / タリク・アンウォー
音楽 / アレクサンドル・デスプラ
音楽監修 / マギー・ロドフォード
出演
コリン・ファース / ジョージ6世
ジェフリー・ラッシュ / ライオネル・ローグ
ヘレナ・ボナム・カーター / エリザベス
ガイ・ピアース / エドワード8世
ティモシー・スポール / ウィンストン・チャーチル
デレク・ジャコビ / 大司教コスモ・ラング
ジェニファー・イーリー / ローグ夫人
マイケル・ガンボン / ジョージ5世
クレア・ブルーム / メアリー王妃
イヴ・ベスト / ウォリス・シンプソン
フライア・ウィルソン / エリザベス2世
ラモーナ・マルケス / マーガレット
アンソニー・アンドリュース / ボールドウィン首相
映画賞など
ゴールデングローブ賞
- 主演男優賞
アカデミー賞
- 作品賞
- 主演男優賞
- 監督賞
- 脚本賞
英国アカデミー賞
- 作品賞
- 英国作品賞
- 主演男優賞
- 助演男優賞
- 助演女優賞
- オリジナル脚本賞
- 作曲賞