「アメリカン・ビューティ」は映画を見るよりも先に音楽を聞いていました。トーマス・ニューマンの奏でる音は、私が好んで聞くチル・アウト系での有名曲です。この映画を印象付ける、穏やかで静かな雰囲気な曲です。
音楽
サントラ
サントラとは別にオリジナル・スコア版があります。個人的にはそちらの方がイイです。
映画を盛り上げるためとはいえサントラには様々な、というより雑多な曲が入り込みすぎて統一感がとれていないものがほとんどです。
そのためすぐに飽きてしまいます。このアメリカン・ビューティもその類に漏れませんが、オリジナル・スコア版は統一感がありまし。
逆にサントラの最大の魅力は様々なジャンルの曲を一気に聴くことが出来るという点にあると思います。
さて、12曲目がCafe del Mar 8に収録されており、チルアウトでは有名な曲です。
これらはオリジナル・スコア版にも収録されており、オリジナル・スコア版には他にもチルアウト向きの曲が多いのでおススメです。
2曲目はビートルズの「ビコーズ」をアカペラ。9声によるコーラスを多重録音したカヴァー。
4曲目のFreeは1970年代のブリティッシュ・ロック・バンド。
5曲目は日産のTIIDAのCMでも使われました。
曲目
アメリカン・ビューティー
1999
label : Universal
Artist / Title
1 Thomas Newman / Dead Already
2 Elliott Smith / Because
3 The Folk Implosion / Free To Go
4 Free / All Right Now
5 Bill Withers / Use Me
6 Eels / Cancer For The Cure
7 The Who / The Seeker
8 Bobby Darin / Don’t Rain On My Parade
9 Betty Carter / Open The Door
10 Gomez / We Haven’t Turned Around
11 Peggy Lee / Bali Ha’i
12 Thomas Newman / Any Other Name
オリジナルスコア
オリジナル・スコア版。作曲はトーマス・ニューマンです。サントラ版よりもこちらの方がアルバムとしての統一感があるし、聴き応えがあると思います。
オリジナル・スコア版ということもあるのでしょうが、アルバムとしての統一感があり、これはまさにトーマス・ニューマンのアルバムです。
ただ、彼の持つ音楽性を全て出し切っているわけではないでしょう。というのは似た雰囲気の曲が多いためです。
これはサントラ用に作られたのだから当然のことで、逆にアルバムとして聴くのであれば、「アメリカン・ビューティ」にインスパイアされた作品集として聴けばよいと思います。
18曲目がCafe del Mar 8に収録されていますが、他にも1曲目など多数の曲がチルアウトに向いています。
18曲目と8曲目は曲名は違うが同じメロディラインです。編曲箇所が違うという程度で、オリジナルとリミックスの違いです。
サントラの場合こうしたことがよくありますが、いつもとまどってしまいます。
ややこしい習慣です。1曲目と19曲目もそう。
曲目
アメリカン・ビューティー(オリジナル・スコア)
1999
label : Universal
1 Dead Already
2 Arose
3 Power of Denial
4 Lunch w/ The King
5 Mental Boy
6 Mr. Smarty-Man
7 Root Beer
8 American Beauty
9 Bloodless Freak
10 Choking the Bishop
11 Weirdest Home Videos
12 Structure & Discipline
13 Spartanette
14 Angela Undress
15 Marine
16 Walk Home
17 Blood Red
18 Any Other Name
19 Still Dead
アメリカを写す映画
アメリカン・ビューティはアメリカの縮図、社会の闇を抉り出した作品と評されます。それも、白人社会の抱える、社会の闇です。
外見的には成功しているように見えていても、内実は、決して褒められたものではないということです。
崩壊した家庭。やる気のない夫、向上心だけの妻、冷めた娘。
隣の家庭は、高圧的な家父長、虐げられる妻、虐待を受ける息子。
そして、麻薬の売人、未成年への恋愛、同性愛、殺人・・・。
映画の冒頭。ホームビデオで撮ったような荒い映像で、娘が自分の父親を殺してくれないかと、誰かに依頼するシーンから始まります。
映画全体のプロットに影響する始まりで、この映画の結末が決していいものではないことを暗示しているシーンです。
バラの品種
タイトルのアメリカン・ビューティーはバラの品種の一つだそうです。アメリカで作られた真紅のバラです。
バラが登場するのは前半。レスター家の庭に植えられているのがバラ。
そして、最も印象的に使われているのが、主人公のレスターがアンジェラに対する妄想シーンです。
バラの花びらにアンジェラが半裸で埋もれて、レスターを挑発する場面で効果的に使われています。
モデル
この映画のモデルになった事件があったそうです。
1990年代はじめにニューヨークで、17歳の女性と妻帯者の男性カップルが起こした事件で、全米メディアを騒がせました。
カップルはエイミー・フィッシャーとジョーイ・バタフューコ。
二人は不倫関係になり、ジョーイ・バタフューコの妻メアリー・ジョー・バタフューコの頭を撃ちました。
エイミー・フィッシャーは当時17歳。ロングアイランドのロリータと呼ばれました。
フィッシャーは6年ほど服役し、ジョーイは4カ月服役しました。
この事件をモデルにして、アラン・ボールはこの映画の脚本を書いたのですが、書き上げるまでに8年の歳月をかけたそうです。
あらすじ/ストーリー
ホームビデオ
ホームビデオで撮ったような荒い映像。
少女が自分の父親を殺してくれないかと、誰かに依頼している…。
レスター・バーナム
レスター・バーナムは広告代理店に勤めているしがないサラリーマン。
レスターが会社で新しい上司に呼ばれた。
新しい上司はレスターに経費削減が云々と説明し、自己評価を提出するように命じた。
リストラ対象になっているようだ。
妻のキャロラインは不動産業界で働いていた。
上昇志向が強く、レスターは尻に敷かれていた。
二人はすでにセックスレスの状態となっている。そして、キャロラインはレスターを見下していた。
二人の間には、娘のジェーンがおり、娘も父親を馬鹿にしていた。
そんな二人に囲まれ、レスターは肩身を狭くして家で過ごしていた。
家族は庭付きの一戸建てに暮らしている。
アンジェラ
ある日、レスターは娘のチアリーダーの練習成果を見にキャロラインと出かけた。
バスケットボールのハーフタイムでのチアリーダーショーだ。
そのショーの中で、娘と一緒にダンスをするアンジェラに一目惚れした。
帰宅したレスターの頭の中はアンジェラに対する妄想でいっぱいになった。
天井を見上げると、半裸のアンジェラがバラの花に囲まれ、レスターを手招きしている。
過去何年も感じたことのない感覚だった。
レスターは、アンジェラがマッチョな男を好きだと知り、トレーニングを始めた。
トレーニング機器を取り出して急にトレーニングを始めた父を見て、ジェーンは父がアンジェラに気があることに気付いた。
そして、ますます軽蔑するようになった。
変わりゆくレスター
トレーニングをしていく中で、レスターはキャロラインにも自己主張をするようになる。
彼の中で何かが変わり始めていた。
キャロラインは不動産の仕事がうまくいっていない。物件が売れないのだ。
気持ちもふさぎ込みがちになる。
隣にある家族が引っ越してきた。
その家の息子がジェーンをビデオ撮影している。ジェーンは薄気味わるがった。
息子はリッキーといいう。ジェーンと同じ高校に転校してきたのだ。
リッキーの父フランクは厳格な海兵隊大佐で、妻とリッキーは常に緊張を強いられている。
キャロライン
キャロラインはレスターを連れて同業者が集まるパーティに出かけた。
そこで地元では有名なやり手の同業者と懇意になる。
レスターはすでに妻に興味を失くしているので、何とも思わない。
それよりも、トレーニングにいそしみ、日々変わっていく自分に満足していた。
そして、隣家のリッキーからマリファナを買って吸い始めた。久しぶりのことだった。
リッキーは父に隠れて麻薬の売人をしていた。金回りが良いのはそのせいだ。
リッキーの父フランクは、レスターとリッキーの親密な様子に不安を抱いている。
自信を持つレスター
徐々に自信が湧いてきたレスターは、上司に不満をぶち撒け、上司を脅して辞職した。
その帰り、アルバイトを募集している、ハンバーガー屋に就職を決めてきた。
同じ日、キャロラインは同業者のパーティで出会った同業者と不倫の関係となる。
そして、その日の夕食の席。自分を見下してきた妻と娘を怒鳴りつけた。
レスターの変貌にキャロラインとジェーンは驚いた。
ジェーンは冷めた夫婦の両親に愛想をつかし、リッキーと深い関係になっていった。
ある日、レスターがアルバイトをしているハンバーガー屋にキャロラインが不倫相手と車でやってきた。
不倫相手はレスターに見られたことで、キャロラインにしばらく距離を置こうと去っていった。
キャロラインは泣き崩れた。
最期の始まり
激しい雨の降る夜。
レスターが殺される日。
リッキーの携帯に知らせが入った。レスターからだった。マリファナを買いたいというものだった。
夕食を切り上げ、リッキーは両親に、隣の家のジェーンに返さなければならないものがあると告げて家を出た。
フランクは怪しみ、レスターの家に入ってからのリッキーの様子を見ていた。
そして、フランクは二人ができていると勘違いした。
もどってきたリッキーを殴り飛ばすと、出て行けと叫んだ。
リッキーはこれを機に家を出る覚悟を決めた。そして、ジェーンに会いに行った。
雨に打たれるキャロラインの車の中。
レスターに不倫を知られたキャロラインは銃を握りしめ、車を走らせた。
フランク
レスターの家にはアンジェラが泊まりに来ていた。
そこに父フランクに勘当されたリッキーがやってきて、ジェーンと駆け落ちしようと持ちかけた。
アンジェラは引き止めるが、ジェーンと喧嘩になり、リッキーに言われた一言に深く傷ついた。
ガレージ。
トレーニングをしていたレスターのもとに、ずぶ濡れのフランクがやってきた。
ずぶぬれなので、レスターはフランクを招き入れ、着替えるように促した。
すると、突然フランクにキスされた。
レスターはフランクがゲイであることを悟った。
なるべく傷つけないように、自分にはその気がないことを告げた。
フランクは静かに帰っていった。
銃声
階段でアンジェラが泣いている。レスターはアンジェラを慰め、二人の距離が急に縮まった。
レスターとアンジェラはリビングで二人きりとなり、ついにレスターの妄想が現実となる。
アンジェラが処女だと知ったレスターは彼女を抱くことをやめた。父親の顔を取り戻す。
アンジェラが身支度を整えている間、レスターは一人でキッチンに座り、家族写真を見つめていた。
自分は幸せだと微笑む。
銃声が鳴り響いた。
レスターが背後から頭を撃ち抜かれて死んだ…。
映画情報(題名・監督・俳優など)
アメリカン・ビューティー
(1999年)
監督:サム・メンデス
製作:ブルース・コーエン,ダン・ジンクス
脚本:アラン・ボール
撮影:コンラッド・L・ホール
音楽:トーマス・ニューマン
出演:
ケヴィン・スペイシー/レスター
アネット・ベニング/キャロリン
ゾーラ・バーチ/ジェーン
ウェス・ベントリー/リッキー
ミーナ・スヴァーリ/アンジェラ
ピーター・ギャラガー/バディ
クリス・クーパー/フィッツ大佐
映画賞など
アカデミー賞
- 作品賞
- 監督賞
- 主演男優賞
- 脚本賞
- 撮影賞
ゴールデングローブ賞
- 最優秀作品賞(ドラマ)
- 最優秀監督賞
- 最優秀脚本賞
英国アカデミー賞
- 作品賞
- 主演男優賞
- 主演女優賞
- 作曲賞
- 撮影賞
- 編集賞
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