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(映画)椿三十郎(1962年)の感想とあらすじは?

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「椿三十郎」の紹介です。

重厚で凄みと渋みのある三船敏郎と、カミソリのように眼光鋭い敵役の仲代達矢。

緊張感の張りつめた展開がテンポよく続くなか、張りつめた空気を一挙に解放してくれるのが城代家老夫人の入江たか子と娘の千鳥の親子。

間の取り方が絶妙で、直前の張りつめた空気とのギャップがすごくて思わずクスリとしてしまいます。

その入江たか子が三十郎に小言をやんわりと言う場面。

子供を優しく諭すような感じで、さしもの三十郎もどうしていいのか苦笑いするしかありません。

「あなたは、少しギラギラし過ぎます。抜き身みたいに。本当にいい刀は鞘に入っているもんですよ」。

この城代家老夫人と娘の親子はとてもいい脇役で、少々殺伐とした設定の中で、一粒の清涼剤の役割を果たしています。

ラストの三船と仲代の決闘シーンは名シーンです。

決闘は至近距離で数十秒無言のまま立ちつづけ、音楽もありません。

ですが、そうしたことすら感じさせないほどの緊迫した様子に画面に引き込まれてしまいます。

三船敏郎と仲代達矢の存在感の凄みがよく分かる場面です。

ポンプを使って血が噴き出す手法自体は、「用心棒」で使われていましたが、夜間シーンで画面が暗いことと出血量も少ないため地味で目だちませんでした。

ですが、本作の派手な血飛沫シーンは、以後この手法を大いに広めることになり、殺傷等で血が噴出す演出は当たり前になるほどのものとなります。ただ、カラーでは見たくないかもしれません。

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感想/コメント

原作は山本周五郎の「日日平安」となっていますが、より詳しくは、「日日平安」の映画化のために描かれた脚本がベースです。

「日日平安」は原作に比較的忠実に、気弱で腕もない主人公による殺陣のない時代劇としてシナリオ化されていたそうですが、東宝側が難色を示したため、企画は実現しませんでした。

「用心棒」の興行的成功から、続編を東宝から依頼された黒澤が、陽の目を見ずに眠っていた「日日平安」のシナリオを大幅に改変したのが本作です。

2007年に完全リメイク化「椿三十郎」。椿三十郎役に織田裕二、室戸半兵衛役に豊川悦司

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あらすじ/ストーリー/ネタバレ

ある城下町の真夜中の森の中。

朽ちた社殿に人目を避けるように九人の若侍たちが集まり密談をしている。

城内に贈収賄がはびこっているのを察知した井坂(加山雄三)らが、城代家老睦田に、次席家老黒藤と国許用人竹林の汚職粛清の意見書をさし出したが、受け入れられず、大目付菊井に諭されてこの社殿に集っていたのだ。

この脳天気に気勢を上げる若者たちの前に奥の部屋からアクビをしながら流れ者の浪人(三船敏郎)が現れる。

謀議を聞かれたと緊張する一同にどこ吹く風。

その浪人者は、「お前等の話しを聞いていると、岡目八目、当人よりも状況が良く解る」。城代家老が本物で、大目付の菊井が黒幕だというのだ。

その言葉の通り、社を遠巻きに多数の侍が迫ってきていた。あおくなった一同を制してその浪人者は、九人を床下へかくし一人でこの急場を救った。

この時、敵方の室戸半兵衛は「もう、ここには居るまい、それに、この男を片付けるにはそうとう手間が掛かるぞ」といい、この浪人者の腕に舌をまいた。

自分たちの甘さを後悔し、浪人に手をついて頭を下げてた。

かしこまる若待をみた浪人者は、「お前たちのやることは危なっかしくて見てられねえ!」といい、力をかすことにした。

城代家老は屋敷からはすでにどこかへ連れていかれた後であり、夫人(入江たか子)と娘の千鳥(団令子)が監禁されていた。

浪人者はこの二人を救いだし、見張り役の一人(小林桂樹)を捕らえた。夫人と千鳥はおっとりした女性で、浪人を少々イライラさせた。

「あなたは、少しギラギラし過ぎます。抜き身みたいに。本当にいい刀は鞘に入っているもんですよ」 などと説教するのだった。

捕らえた見張り役は城代家老の監禁先を言わないので押入れの中に閉じ込めた。

夫人と千鳥をかくまった家は、若侍の一人寺田の家で、黒幕の一人黒藤の隣だ。

黒藤の屋敷は別名を椿屋敷と言われるくらい、椿の花が咲いていた。夫人の言葉にその浪人者は名を椿三十郎と名乗った。

皆は、城代家老の居場所を探すに躍起だ。黒藤か菊井か竹林の家のどこかに監禁されているはずだ。

その頃、黒藤の屋敷では悪党どもが策を練っていた。黒藤、竹林(藤原釜足)、それに菊井である。

そこに、室戸半兵衛も現れた。そして、三十郎らをおびき出す作戦を考えついた。

三十郎は敵状を探るため、室戸を訪ねていった。

だが、三十郎を信用しない保川、河原は、三十郎に裏切られたら大変だと、三十郎の動向をうかがうことになった。

三十郎を支持する井坂、河原も、あの二人には任せておけないと三十郎の後をつけた。

しかし室戸と三十郎に見つけられた四人は当見をくって捕えられた。

三十郎は室戸の隙をみて、番人を斬り倒し、自分をしばらせて四人を逃がした。寺田の家に帰って来た三十郎は若侍をどなりつけた。

その時、千鳥が叫んだ。椿屋敷から流れてくる川の中から井坂たちが城代家老に提出した血判書の一部が見つかったのだ。

この川は寺田の庭の隅を通っているのだ。家老は黒藤の家に監禁されていることがわかった。

三十郎は、黒藤の警固を解かせるため、むほん人の一味が光明寺に集っていると知らせに行くことになった。

その留守になった合図に椿の花を川に流すというのだ。

計略は図に当った。警固の一隊は光明寺に向った。

だが、光明寺の門の上に寝ていたという三十郎の言葉に嘘がばれてしまった。光明寺には門がないのである。三十郎は捕えられた。

室戸半兵衛が光明寺へ臣下を呼び戻しに去ると、縛られた三十郎の他は、黒藤たち数人の老人が見張りで残っているのみだ。

三十郎は、早く中止の合図をしないと、隣に集まった侍たちが助けにくると老人を脅した。「白い椿が中止の合図だ」と三十郎は黒藤らを急かした。

映画情報(題名・監督・俳優など)

椿三十郎
(1962年)

監督:黒澤明
製作:田中友幸、菊島隆三
原作:山本周五郎「日々平安」
脚本:菊島隆三、小国英雄、黒澤明
撮影:小泉福造、斎藤孝雄
美術:村木与四郎
音楽:佐藤勝

出演:
椿三十郎/三船敏郎
室戸半兵衛/仲代達矢
井坂伊織/加山雄三
見張りの侍・木村/小林桂樹
睦田(城代家老)/伊藤雄之助
睦田夫人/入江たか子
千鳥./団令子
黒藤(次席家老)/志村喬
竹林(国許用人)/藤原釜足
菊井(大目付)/清水将夫
守島隼人/久保明
河原晋/太刀川寛
広瀬俊平/土屋嘉男
保川邦衛/田中邦衛
関口信吾/江原達怡
寺田文治/平田昭彦
里藤家三太夫/小川虎之助

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