軽ーいノリの映画で、見ていて疲れません。
突っ込みどころ満載過ぎですが、そうしたことに目くじらをたててはいけない映画です。
何よりも軽薄なところがいい映画だからです。漫画が原作だからというわけではなく、そういう風に脚本を仕立てていますし、演出もそうなっています。
感想/コメント(ネタバレ含みます)
タイムスリップ
現代から戦国時代にタイムスリップして、織田信長になってしまう高校生サブローが主人公です。
サブローは、権威や威厳というものには無頓着で、それがゆえに信長の家臣や正室の帰蝶から慕われます。
タイムスリップして歴史上の人物と入れ替わるところなどは、IF戦記と言えなくもないですが…、IF戦記と言い切っていいか迷ってしまいます。
時間の概念
この映画は、サクサク進んでいくので、まぁ、そんなものかと思ってみてしまうのですが、時間の概念がおかしいです。
サブローが戦国にきてから本能寺の変に至るまでの年月というものが、それこそ全くと言っていいほど考慮されていません。
まるで、1週間か1か月程度の時間軸ですべてが進んでいるかのようです。
ですから、サブローが現代に戻った際にも、全然時間が動いていないという結果になるのでしょうか…。
サブローの考えていること
サブローのメンタリティは、まぁ、その、あれです…、
言っていることと、やっていることが大きく違うという矛盾があります。
戦のない平和な、世界を築こう、と訴える一方で、戦では先陣を切って敵を斬り倒しています。
前半の石山本願寺との戦の時に、ピンチの明智光秀を助けに駆け付けます。戦場での暴れ具合は見事ですが、平和な姿には見えません。
このことは無矛盾ととらえていいのでしょうか…。
本能寺の変
本能寺の変で、焼け跡から織田信長の遺体が発見されなかったとされています。
つまり、その時点では生き延びたのか、死んだのかが分からなかったのです。
この不確かな状況が、明智光秀に不利に働きます。
明智光秀は、方々の大名に味方に付くように働きかけますが、誰も乗ってきませんでした。
というのは、織田信長が本当に死んだのかが分からなかったからです。
そのため、日和見を決め込む大名が続出し、その間隙をぬって、中国地方で毛利攻めをしていた羽柴秀吉が戻ってきて明智光秀を討つことになります。
秀吉にとって幸いだったのは、畿内の諸大名が動かなかったことでした。先に動かれていたら、秀吉が天下を取っていたかわかりません。
逆に、これほど有利な状況にいた畿内の大名が動かなかったのは、動くに動けなかったからです。
遠方にいる秀吉に比べて情報は多くあったはずですが、雑音も多かったはずで、膨大な情報に流されてしまって、動くに動けなくなってしまったのではないでしょうか。
映画では、本能寺の変の黒幕が羽柴秀吉なので、すぐに駆け付けられた(というより、すでに駆け付けています…なぜ?)ことになっています。
そのあと、サブローが明智光秀として捕らえられ、秀吉に首を斬られて、現代に戻る、という流れです。
信長後の時代
信長がいなくなった後の時代については、数年後に届いた一通の手紙で様子が知れます。
手紙の主は、同じく戦国時代にタイムスリップしたウィリアムからでした。
ウィリアムが現代に戻ってきて、帰蝶から託されたものを渡すために手紙を書いたのです。(ウィリアムが現代に戻ってきたということは、やはり戦国時代では死んだ、ということなのでしょうか。)
手紙には、USBメモリーが同封されていました。
そういえば、スマホを戦国時代にもっていきましたね。ですけど、スマホってバッテリー長持ちしないから、この設定って、無理があるんじゃないでしょうか…。
まぁ、仮に大丈夫だったとして、スマホでメッセージを録画して、ウィリアムに託したということは、録画のあとに、ウィリアムは死んだのでしょうか??
サブローの志は受け継がれる
メッセージの内容は、サブローがいなくなってから色々ありましたが、サブローの志は受け継がれ、戦さのない世の中になったというものでした。
志を受け継いだのが誰なのかが分かりません。
映画の中では、徳川家康が志を受け継ぐ、というようなことを言っていますので、江戸時代になって平和になったとでも言いたいのでしょうか。
その前に、羽柴秀吉が天下を統一し、豊臣秀吉となったときに、国内には平和が訪れるのですが…。
羽柴秀吉の復讐
そういえば、羽柴秀吉は、本物の織田信長(=明智光秀)を殺すときに、これは復讐の始まりでしかない、と言っていましたが、復讐は果たされたのでしょうか?
信長に少しでも関係したものは、皆殺しのような勢いでしたが…。
帰蝶が生きてスマホで録画しているのですから、恩讐は彼方に行ってしまったのでしょう。
帰蝶の謎
そもそも、帰蝶は斎藤道三から織田家へ嫁入りした後、どうなったのかが良く分かっていません。
いきなり歴史のはざまに消えてしまうのです。どこへ消えてしまったものか…
その帰蝶と織田信長の間で交わされる感動的な場面が後半に用意されています。ですが、まったく感動できませんでした。
感動的なシーンであることは、見ればわかります。
そうしたセリフですし、音楽もそうですし、そうした演出になっているからです。
ですが、まったく感動できません。
感動できないのですが、白々しいとも思いませんでした。
このシーンは、見ていて無感情になりました。
感じた唯一のことは、軽薄な場面ではないな、だけど、それで?でした。
軽薄だけが取り柄の映画の中に、感動的なシーンを入れようとしても、無理筋というもののようです。
あらすじ/ネタバレ
戦国時代にタイムスリップした高校生・サブロー(小栗旬)は、奇しくも同じ顔をした織田信長(小栗二役)と出会い、信長として生きることになってしまう。はじめは逃げ腰だったサブローであったが、戦の惨状を目の当たりにするにつけ、織田信長として生きる覚悟を決め、戦のない世をつくろうと思い始める。
歴史音痴のサブローは、史実を知らないまま、桶狭間、上洛、金ヶ崎、浅井朝倉との戦い……と歴史通りのことを成して、ついに安土城を完成させた。これで天下統一も間近と思った矢先、ふと手にした歴史の教科書で自分(=織田信長)がもうすぐ死ぬ運命にあることを知る。
信長を狙う敵は多い。彼を怨んで暗殺の機を窺う秀吉(山田孝之)や、彼に嫉妬する本物の信長・明智光秀(小栗旬)も虎視眈々と彼の寝首をかこうと狙っていた。光秀は、自ら信長の座を手放したにも関わらず、恒興(向井理)をはじめとする家臣の信頼や妻・帰蝶(柴咲コウ)の愛を勝ち得ているサブローに憎しみを抱くようになっていたのだ。
死が迫りくる中、信長は運命に抗い、生き抜こうと決意。その思いの表れとして、帰蝶との結婚式を企画する。その場所は京都・本能寺。それを知った秀吉は、光秀に本能寺で信長を討つことを提案するのだった…。
刻一刻と戦況は激しくなっていく。信長は歴史を変え、平和な国を築くことができるのか!?
https://www.toho.co.jp/movie/lineup/nobunaga-movie.html
1582年、本能寺で彼を待ち受けるものとは…?
映画情報(題名・監督・俳優など)
信長協奏曲(のぶながコンツェルト)(2016)
監督 / 松山博昭
原作 / 石井あゆみ
脚本 / 西田征史,岡田道尚,宇山佳佑
撮影 / 江原祥二
美術 / 清水剛
衣裳 / 大塚満
編集 / 平川正治
音響効果 / 壁谷貴弘
音楽 / ☆Taku Takahashi
主題歌 / Mr.Children『足音 ~Be Strong』
VFX / 西尾健太郎
衣裳デザイン / 澤田石和寛
選曲 / 泉清二
出演
小栗旬 / サブロー/織田信長
柴咲コウ / 帰蝶
向井理 / 池田恒興
藤ヶ谷太輔 / 前田利家
水原希子 / 市
濱田岳 / 徳川家康
古田新太 / 松永弾正久秀
でんでん / 沢彦
勝矢 / 蜂須賀小六
阪田マサノブ / 丹羽長秀
阿部進之介 / 佐々成政
北村匠海 / 森長可
高嶋政宏 / 柴田勝家
山田孝之 / 羽柴秀吉
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