室町時代に起きた「寛正の土一揆(かんしょうのつちいっき)」を舞台にした映画です。
原作は垣根涼介さんの小説「室町無頼」です。
寛正の土一揆の背景には、長禄・寛正の飢饉がありました。
大飢饉は長禄3年(1459年)から寛正2年(1461年)まで続き、寛正の土一揆は寛正3年(1462年)9月に京都で起きます。
一揆では徳政令を求めて京で浪人なども加わって土倉を襲ったり、放火などを行ったようです。
その首謀者が、この映画の主人公・蓮田兵衛(はすだひょうえ)です。
原作では才蔵が主人公でしたので、主人公が入れ替わっています。このことが映画ではマイナスに働いています。
そして、今一つだったのが、音楽です。西部劇を目指したのでしょうか。
もしそうなのであれば、映像や演出を、もっと殺伐とした方が良かったように思います。
埃っぽく殺伐とした室町の町並みと、貧困にあえぐ人々の姿を背景にして、もっとハードボイルドで乾いた空気感の方が映画全体のトーンに合っていたと思います。

感想/コメント
才蔵の立ち位置と存在
原作では主人公だった才蔵が、映画では主要な登場人物へと変更になっています。
原作の設定を知らないで映画を観ると、才蔵の立ち位置がとても中途半端に感じられます。
才蔵は登場頻度こそ多いものの、存在意義が希薄に感じられるシーンが多く、なぜ才蔵がここまで物語に関与してくるのかが見えづらくなっています。
それならいっそ才蔵の登場を最小限に抑え、蓮田兵衛の視点から、より重厚に時代と権力の腐敗を描いたほうが、映画としての完成度は上がったかもしれません。
そうすると原作とは大幅に異なってしまいますが、骨太な映画になった気がします。
原作者の垣根涼介さんが、室町時代中期を舞台に選んだのが、当時の状況がバブル崩壊後の失われた時代を経験した現代日本に似ているからでした。
であれば、時代を描くという意味でも、才蔵を引っ込めて、当てるべき焦点を変えたほうが良かったように思います。
そもそも、才蔵役が浮いてしまって、観ていて痛々しかったです。
舞台となる時代
映画の舞台となる寛正の土一揆は寛正3年(1462年)に起きましたが、5年後の応仁元年(1467年)に応仁の乱(応仁・文明の乱)が起きます。
まさに乱世直前の時代を描いた映画です。
映画で登場する骨皮道賢は、足軽を戦場に登場させた人物として知られます。骨皮道賢の足軽は当時の戦の様相を変えました。
足軽は昔からいましたが、兵ではなく、人足仕事に従事する存在を指していました。
骨皮道賢の足軽は、この映画の舞台となる寛正の飢饉の折に都に流れ込み、風体も乞食と変わらない者がいるくらいだったようです。
映画で描かれる骨皮道賢の手下とはだいぶ違ったようです。
武士ではないので、戦いの中では逃げ散ったり、火事場泥棒も平然と行ったようです。
ゆうきまさみさんの「新九郎、奔る!」の第2巻で骨皮道賢が登場して、簡単に紹介されています。

蓮田兵衛
蓮田兵衛は歴史上、一度だけその名前が登場します。登場するのは「新撰長禄寛正記」です。
「新撰長禄寛正記」は、長禄・寛正年間(1457年−1466年)を中心とする室町時代の日記です。
作者・成立年代とも不詳です。
畠山持国(もちくに)の実子・義就(よしなり)と養子・政長(まさなが)の家督争いが書かれており、当時の状況も書かれている本です。
あらすじ
室町時代中期。
都・京は、まさに地獄の様相を呈していました。長禄・寛正の大飢饉と疫病が国を覆い、河原には無数の死体が積み上げられていたのです。政は乱れ、民は飢え、死が日常と化した時代でした。
そんな時代、蓮田兵衛は己の腕と才覚ひとつで、この乱世を渡り歩いていました。
彼には権力欲も出世欲もありません。
ただ、この荒れ果てた世の中に一石を投じようとする静かな炎が、心の奥底で燃えていました。
蓮田兵衛は、骨皮道賢に呼び出されていました。
骨皮道賢は、幕府から京の治安維持を任される洛中警護の首領となり、己の利益と力のために生きる冷酷な存在になり替わっていました。
蓮田兵衛はひとりの若者を拾います。名を才蔵と言いましたが、兵衛はカエルと呼び、棒術の修行をさせます。
蓮田兵衛は個性豊かな無頼者たちを束ね、民が苦しむ元凶となった土倉を襲い、火を放ち、京の町を揺るがします。
映画情報(題名・監督・俳優など)
監督 / 入江悠
アクション監督 / 川澄朋章
企画プロデュース / 須藤泰司
プロデューサー / 栗生一馬、北岡睦己
ラインプロデューサー / 中森幸介、福居雅之
原作 / 垣根涼介『室町無頼』(新潮文庫刊)
脚本 / 入江悠
キャラクターデザイン / 荒木里江、秋月洋子
撮影 / 大塚亮
美術 / 松崎宙人
衣裳 / 古賀博隆
編集 / 佐藤崇
音楽 / 池頼広
音楽プロデューサー / 津島玄一
殺陣 / 清家一斗
出演
大泉洋 / 蓮田兵衛
長尾謙杜 / 才蔵
松本若菜 / 芳王子
遠藤雄弥 / 赤間誠四郎
前野朋哉 / 七尾ノ源三
阿見201 / 馬切衛門太郎
般若 / 小吉
武田梨奈 / 超煕
水澤紳吾 / 伝助
岩永丞威 / 斬ノ助
吉本実憂 / お千
ドンペイ / 孫八
川床明日香 / 小萩
稲荷卓央 / 彦次郎
芹澤興人 / 蔵人
中村蒼 / 足利義政
矢島健一 / 伊勢貞親
三宅弘城 / 法妙坊暁信
柄本明 / 唐崎の老人
北村一輝 / 名和好臣
堤真一 / 骨皮道賢
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