感想/コメント
映画そのものよりも、今となってはテーマ曲の方が有名になってしまっている作品です。
ですが、このテーマ曲もこの映画があればこそであり、映画と音楽がそれぞれのイメージを相乗的に押し上げた結果であろうと思います。
原作はサー・ローレンス・ヴァン・デル・ポストの「影の獄にて」と「The Seed and the Sower」。
サー・ローレンス・ヴァン・デル・ポストは、南アフリカ出身のボーア人貴族。また、軍人でもあり、探検家、農園主、イギリス政府・王室顧問という面も持っている人物である。カール・G ・ユング の友人としても知られます。
その作者自身がインドネシアのジャワ島奥地で体験した、日本軍俘虜収容所での出来事が描かれています。
第二次世界大戦の末期における、極限状況に置ける人間像が生々しい映画です。その生々しさのおかげとでもいうべきか、戦争映画でありながら、戦闘シーンが登場しません。
ラストの、ビートたけし演じるハラ軍曹がロレンスに言う「メリークリスマス。メリークリスマス、ミスター・ローレンス。」は、日本映画史上屈指の名場面です。
この映画のテーマ曲の曲名にもなっています。
あらすじ/ストーリー/ネタバレ
1942年。
インドネシアのジャワ。山岳地帯の谷間に日本軍の浮虜収容所がある。
夜明け前。ハラ軍曹は英国軍中佐ロレンスを叩き起こし、閲兵場に引き連れて行った。
広場にはオランダ兵デ・ヨンと朝鮮人軍属カネモトが転がされていた。
ハラ軍曹は処置することを決め、万一の時の証人として日本語を話すロレンスを立ち合わせたのだ。
バビヤダ市内の法廷では、英国陸軍少佐ジャック・セリアズの軍律会議が開廷された。
セリアズは浮虜収容所へ送られてきた。ヨノイ大尉はハラ軍曹に、セリアズをすぐに医務室へ運ぶよう命令する。
ヨノイ大尉の稽古場にハラ軍曹が現れ、浮虜が怯えているため、ロレンスが面会を申し入れていると告げる。
ヨノイ大尉は唐突に、二・二六事件の3ヵ月前満州に左遷されたため決起に参加できず、死に遅れたと語った。
カネモトの処刑が言い渡された。
処刑場には浮虜側の上級将校も立ち会わされ、ハラ軍曹がカネモトの首を切り落とした。デ・ヨンも舌を噛みきった。
ヨノイ大尉は「礼を尽くせ」と命ずるが無視され激昂する。そこで、収容所の全員に48時間の謹慎と断食を命じた。
無線機を持ちこんでいたとしてロレンスとセリアズは独房入りとなった。
二人は壁越しに話をした。
ロレンスとセリアズは司令室に連行された。
ハラ軍曹は酒に酔い「ろーれんすさん。ふあーぜる・くり~すます」と笑いかける。
ハラ軍曹は2人に収容所に帰ってよいといい渡す。
ヨノイ大尉が浮虜全員を閲兵場に整列させた。
この場で、ヨノイ大尉は「斬る」と軍刀を抜いた。そのとき、セリアズが歩み出て、ヨノイ大尉の腕をつかみ、頬に唇を当てた。
ヨノイ大尉は更迭され、新任のゴンドウ大尉が着任した。
閲兵場に深い穴が堀られ、セリアズが首だけ出して生き埋めにさせられる。
ある夜、ヨノイ大尉が現れ、セリアズの金髪を一房切り落としく立ち去った。
1946年。
戦犯を拘置している刑務所にロレンスがやってきた。
処刑を翌日に控えたハラ軍曹に面会にきたのだ。
面会も終わり、出口に向かうロレンスに向けハラ軍曹が「ローレンス」と怒鳴った。振り向いたロレンスに「めりい・くりすます。みすたあろーれんす」と告げる。
ハラ軍曹は笑顔だった。
映画情報(題名・監督・俳優など)
戦場のメリークリスマス
(1983年)
監督: 大島渚
製作: ジェレミー・トーマス
原作: ローレンス・ヴァン・デル・ポスト「影の獄にて」
脚本: 大島渚、ポール・メイヤーズバーグ
音楽: 坂本龍一
出演:
ジャック・セリアズ / デヴィッド・ボウイ
ヨノイ大尉 / 坂本龍一
ハラ軍曹 / ビートたけし(北野武)
ジョン・ロレンス / トム・コンティ
ヒックス / ジャック・トンプソン
拘禁所長 / 内田裕也
イトウ憲兵中尉 / ジョニー大倉
ゴンドウ大尉 / 室田日出男
軍律会議通訳 / 戸浦六宏
フジムラ軍律会議審判長 / 金田龍之介
イトウ憲兵中尉 / 三上寛
イワタ法務中尉 / 内藤剛志
ヤジマ一等兵 / 本間優二
軍律会議検察官 / 石倉民雄
ウエキ伍長 / 飯島大介
デ・ヨン / アリステア・ブラウニング
セリアズの弟 / ジェイムズ・マルコム
セリアズ(少年期) / クリス・ブラウン
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