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(映画)アラビアのロレンス(1962年)の感想とあらすじは?

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感想/コメント

ロレンス

戦争に翻弄された、一人の繊細な人間の物語です。

実際のロレンスがどのような人物であったかはわかりませんが、ピーター・オトゥール演じるロレンスは学者肌です。

アラブの中に身を置くために、彼らの文化風習を尊重し、服装もそれに倣うのは、フィールド調査で行われる普通の手法です。

ロレンスは地域研究者、文化人類学者、考古学者がふさわしかったのでしょう。ただ、時代がそれを許さなかったということです。

中東情勢

現在の中東情勢の混迷のもととなる時期が舞台です。

トルコ民族主義が台頭するオスマン帝国の中で、アラブの中にも民族主義が高まり、起きたのがアラブの反乱。

映画はちょうどこの時期に焦点を当てています。

もちろん、焦点の当て方は西欧側からです。それもイギリス側からです。

このアラブ反乱の中で、アラブのゲリラ戦を展開・指示したのがロレンスでした。

ロレンスは戦時中の士気を高めるために創り出された英雄という側面もあるように思われます。

確かに勲功はあるのでしょうが、英雄視されるほどのものではないと思います。

イギリス側の一方的な宣伝工作で作り上げられた偶像のように思われて仕方ありません。

イギリスはフサイン・マクマホン協定でアラブのオスマントルコからの独立を支援しました。

双方の解釈に違いがあり、この協定が後々トラブルのもとになります。

オスマン帝国との戦いが終わると、サイクス・ピコ協定が英仏露で結ばれ、アラブの土地を含むオスマン帝国の分割を3国で取り決めます。

これにバルフォア宣言が加わります。パレスチナでのユダヤの建国を認めた宣言で、これが後にパレスチナ独立戦争、中東戦争へとつながっていく元凶となります。

3つの協定・宣言は秘密裏に取り交わされ、英仏の間では矛盾をきたしていませんでしたが、知らされていなかった外部の、特にアラブの反感を買うことになります。

暴露したのは露で、ロシア革命によって政権が交代したのを機に、旧政権の外交を批判する目的もあり、秘密協定の存在を暴露したのです。

こうしたイギリスが展開した三枚舌外交が現在の中東情勢混迷の元凶になっているのですが、その渦中に図らずもいたのがロレンスでした。

彼のポジションでは高度な政治的判断・動きに関わることができなかったと思われます。

ただ、上からの命令に従ってアラブ独立の支援を行っていただけでしょう。

ロレンスが活躍するということは、上にしてみれば利用価値が高かったに違いありません。

何かあった際にはスケープゴートにできるからです。

文字通り、戦争に翻弄されたのがロレンスという英雄の実像ではないかと思います。

少し古いですが、サミュエル・ハンチントンの「文明の衝突」やエドワード・サイードの「オリエンタリズム」はこの映画を見る際の助けになると思います。

長編映画

3時間を超える長編の映画のため、幕間休憩が入ります。

前半と後半とでくっきりとロレンスの運命が変えられています。

簡単に言えば、上り調子の前半、下り調子の後半。

英雄と讃えらえるようになるのが前半、英雄の虚像が壊れていくのが後半といってもいいです。

これはロレンスの心情の変化にも表れます。

何をしてもうまくいくので、それこそ自分は選ばれた者と錯覚するのが前半。

うまくいくこともいかないことも出るようになり、己が普通の人間であることに気が付いて、傷つき、戸惑い、困惑し、現実から逃げようとする弱さをさらけ出すのが後半。

音楽

この映画のメインテーマは有名です。

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あらすじ/ストーリー

バイク事故

1935月5月13日。イングランドのドーセット。
バイク事故が起きた…。

セント・ポール大聖堂。
バイク事故で亡くなったトマス・エドワード・ロレンスの葬儀が行われた。
参列者には軍関係者が大勢駆け付けた。
ロレンスを直接知っている者もいれば、知らない者、噂だけを知っている者がいる。
評判は二つに分かれていた…。

1916年エジプト

1916年。
イギリス軍・エジプト駐屯部隊。
情報部のロレンス中尉は、周囲からは変わり者で通っていた。

ロレンスが呼ばれた。
そこには司令官と顧問のドライデンがいた。
ロレンスは、シリアの王子ファイサルに会い、イギリス軍への協力を要請する任務を命ぜられる。
ドライデンは、アラビア語に堪能で、アラブに精通しているロレンスに目を付けたのだ。

ロレンスは、アラブ人の案内人と共にアラビア半島へ渡った。
砂漠の中、井戸で休んでいた二人の前に井戸の持ち主アリが現れた。
異なる部族のものが勝手に井戸の水を飲んではいけない。アリは案内人を射殺した。
その後、ロレンスはアリにファイサルの元へ案内すると言われたが、断った。

ファイサルの軍が駐屯する場所の前で、ロレンスはイギリス軍のハリー・ブライトン大佐と出会った。
ファイルの軍はブライトン大佐の忠告にもかかわらず、攻撃を受けやすいところに駐屯し、トルコ軍の襲撃を受けた。

夜になり、ブライトン大佐はファイサルに、撤退して軍を訓練することを提言した。
だが、ロレンスはイギリス軍の支配下になるだけだと、率直に伝えた。

ネフド砂漠

ファイサルの劣勢をどう挽回するかを考えていたロレンスは、地中海に巨砲を向ける港湾都市アカバを内陸から攻める作戦を立てる。
巨砲は陸を向いていない。落とすのは容易いはずだ。
だが、アリはネフド砂漠を渡るのは不可能だとロレンスの無謀さを非難する。
50名を率いたロレンスはブライトン大佐に報告せずアカバに向かう。

砂漠を短期間で渡り切らないといけない。強行軍となった。
この強行軍の中で、ガシムがラクダから落ちて砂漠に取り残された。
それを知ったロレンスは、彼を救いに砂漠を戻った。
アリはそれを制止する。言っても無駄だ。だが、ロレンスは無視した。
そして、灼熱の砂漠でガシムを助け出した。
アリと部下は彼に敬意を表し首長の衣服を進呈した。

ロレンスとアリは、アウダ・アブ・タイが率いる部族と出会った。
ロレンスはアカバに大金があると言ってアウダを説得した。

アカバ目前の夜。
アリの部下がアウダの兵を殺してしまい、一行は一触即発の状態になった。
ガシムの仕業だった。アラブの掟に従って、ガジムへの制裁が必要だった。
第三者的立場のロレンスがガジムを射殺した。一行の危機的状況は回避された。
だが、命をかけて砂漠で助けたガシムを射殺したことに、ロレンスは虚しさを感じた。

アカバ攻略

1917年7月6日。
ロレンスの軍はアカバを襲撃した。
海を向いている巨砲を擁するアカバは、逆の陸から攻められて難なく落ちた。
トルコ軍が守っていても無力だった。

アウダは金貨がないことで怒りが収まらない。
ロレンスはイギリスが金貨を支払うことを約束した。
そして、カイロのイギリス軍司令部に戻って報告するため、シナイ半島を渡ることにした。
この途中で、下僕として雇っていた二人の少年の一人が流砂に巻き込まれて命を落とした。

カイロでの報告

カイロの司令部。
ロレンスは、アラブ人の少年を連れて将校クラブに向かった。
異様ないでたちで現れたロレンスに将校らは唖然とした。
その中、ロレンスはカウンターでレモネードを少年のために注文した。
そして、居合わせたブライトン大佐にアカバ攻略を報告した。

ロレンスは司令官アレンビー将軍へ報告した。
ロレンスは武勲を称えられ、少佐に昇格した。
そして、ロレンスはアウダへ払う約束をした金貨と武器の補給の確約をこぎつけ、アラビアに戻った。

再びアラビアへ

アメリカ人記者ジャクソン・ベントリーは、ロレンスを取材し始めた。

イギリス軍から兵器の援助を受けたアラブ軍は、トルコ軍への攻撃を拡大した。
ロレンスは先頭に立って指揮した。

ロレンスたちは鉄道の爆破作戦を続けた。
だが、物資を略奪するたびに戦果を持ち帰る兵士たちが後を絶たない。
アウダも大量の馬を手に入れることができて満足していた。
そのアウダも帰って行ってしまった。
だが、彼らは再び集まるとロレンスは信じていた。

ある鉄道爆破作戦で、ロレンスの下僕の少年が、爆弾の信管を懐で爆破させてしまい重傷を負った。
重傷で苦しんでいる少年を、痛みから救うためにロレンスは射殺した。それに、トルコ軍につかまれば拷問が待っているだけだ。

トルコ軍に捕まる

ロレンスは、アラブの服装で、トルコ軍の支配するデラアの町を歩き回る。
アリは制止するが、大胆にロレンスは行動した。
だが、トルコ軍司令官ベイの部下に捕らえられた。
そして、鞭打ちと辱めを受けた。

ボロボロになりながら、ようやく釈放されたロレンスはアリに介抱された。
だが、ロレンスは戦う意欲をなくし平凡な生活を望むようになる。

ロレンスの変心

ロレンスはカイロに戻り、アレンビー将軍に転属を願いでた。
だが、受理されず、再びアラビアに戻り、軍を組織してダマスカス攻撃の準備を始める。
集めた兵は札付きの悪がおり、アリはどうしたのかといぶかしる。

そして、トルコ軍との接触。
ロレンスの指揮は常軌を逸した。殺戮と呼ぶのにふさわしい。
アリとベントリーは、ロレンスが変わってしまったことを認識した。
そしてロレンスの軍はは、ダマスカスをイギリス軍よりも早くトルコ軍から解放した。

ダマスカスそして帰国へ

だが、アラブはダマスカスの都市網を維持する方法を知らない。
イギリス軍はそれを高みの見物で見ていた。

病院があり得ないほどひどい惨状になっていることを知ったロレンスは病院を見に行った。
そこへイギリス軍が人道支援に来た。
惨状に愕然とする軍医は、目の前に現れたロレンスをアラブと勘違いして殴り倒した。

戦いは終わった。
これからは大人の政治の世界だ。
ファイサルとイギリス軍幹部との話し合いになる。
役目が終わったロレンスは、大佐に昇進して帰国を命ぜられる。

帰国の途に就くロレンスの乗る車の横を、オートバイが追い抜いた…。

映画情報(題名・監督・俳優など)

アラビアのロレンス
(1962年)

監督:デヴィッド・リーン
製作:サム・スピーゲル
原作:T・E・ロレンス
脚本:ロバート・ボルト
撮影:フレデリック・A・ヤング,ニコラス・ローグ
編集:アン・V・コーツ
音楽:モーリス・ジャール

出演:
トーマス・エドワード・ロレンス/ピーター・オトゥール
ファイサル王子/アレック・ギネス
ハウェイタット族のアウダ・アブ・タイ/アンソニー・クイン
ハリト族の“シャリーフ・アリ”/オマー・シャリフ
アレンビー将軍/ジャック・ホーキンス
ジャクソン・ベントリー新聞記者/アーサー・ケネディ
ブライトン大佐/アンソニー・クエイル
ベイ将軍/ホセ・フェラー
ドライデン顧問/クロード・レインズ
アーチボルト・マーレイ将軍/ドナルド・ウォルフィット

映画賞など

アカデミー賞

  1. 作品賞
  2. 監督賞
  3. 撮影賞
  4. 編集賞
  5. 美術賞
  6. 作曲賞
  7. 録音賞

ゴールデングローブ賞

  1. 作品賞 (ドラマ部門)
  2. 監督賞
  3. 助演男優賞
  4. 撮影賞

英国アカデミー賞

  1. 作品賞総合部門/国内部門
  2. 男優賞国内部門
  3. 脚本賞

キネマ旬報

  1. キネマ旬報ベストテン ベストワン 委員選出 外国映画

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