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バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)(2014年)の考察と感想とあらすじは?

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原題は「 Birdman or (The Unexpected Virtue of Ignorance)」です。

第87回アカデミー賞で、作品賞、監督賞、脚本賞、撮影賞の4部門を受賞しました。

この年のアカデミー賞は史上まれに見る大激戦と言われ、作品賞にノミネートされた8作品がそれぞれ1部門以上を受賞するという珍しい結果になりました。

作品賞にノミネートされたのは、全8作品です。

  1. アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」
  2. リチャード・リンクレイター監督の「6才のボクが、大人になるまで。」
  3. クリント・イーストウッド監督の「アメリカン・スナイパー」
  4. ウェス・アンダーソン監督の「グランド・ブダペストホテル」
  5. ノーラ・グロスマン監督の「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」
  6. クリスチャン・コルソン監督の「グローリー/明日への行進」
  7. ティム・ビーヴァン監督の「博士と彼女のセオリー」
  8. ジェイソン・ブラム監督の「セッション」

この中で本作とデッドヒートを繰り広げたのは次の3作品でした。

作品賞については、おそらく票数が僅差での勝負が繰り広げられたようです。

  1. アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」
  2. リチャード・リンクレイター監督の「6才のボクが、大人になるまで。」
  3. クリント・イーストウッド監督の「アメリカン・スナイパー」
  4. ウェス・アンダーソン監督の「グランド・ブダペストホテル」

「バードマン」は作品賞、監督賞、脚本賞、撮影賞の4部門を受賞しましたが、厳しい状況の中での受賞でした。

前年にメキシコ出身のアルフォンソ・キュアロン監督が(「ゼロ・グラビティ」)が監督賞を受賞したばかりでしたので、同じくメキシコ出身のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督には不利な状況でした。

また、アカデミー賞はコメディ映画に冷たく、本作がブラックユーモアをふんだんに盛り込んでいるため不利な状況でした。

さらに、痛烈すぎるハリウッド風刺は、アカデミー賞の投票権をもつ映画製作の関係者たちで構成される映画芸術科学アカデミー協会の会員の反感を買う可能性がありました。

こうした中での作品賞の受賞は快挙といっていいのかもしれません。

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感想/コメント

音楽(スコア)の使われ方とシーンごとの印象

ジャズ・ドラムの即興的リズムが大変印象的な映画です。

本作のオリジナルスコアは、メキシコ出身のジャズドラマー/作曲家アントニオ・サンチェスが担当しています。

演出のイニャリトゥは、ルーズでオーガニック、内臓に響くようなジャジーな音を求めたそうです。

サンチェスとの録音では実際に映像が揺れ動くタイミングを指示しながら、ドラムの強弱・質感を作り上げました。

例えば劇中、主人公リガンが舞台裏や廊下を焦燥に駆られて彷徨うシーンでは、この ビートの効いた緊張感あるリズムが、その精神状態を視聴者に呼び覚まします。

まるで心拍のようにシーンと密接に絡みつくもので、キャラクターの内面と行動を見事に同期させています。

本作はジャズ・ドラムの印象が圧倒的に強いのですが、クラシック音楽が多用されている映画です。

マラー、ラフマニノフ、ラヴェル、ジョン・アダムズなど クラシック音楽の断片が、幻想的場面や心理の爆発に合わせて用いられ、重要な効果を持っています。

ラフマニノフの「交響曲第2番」は、空想的にリガンが飛行するシーンやラスト近くのストリートシーンで象徴的に流れました。

ワンテイク風のカメラワーク

本作最大の映像的特徴は、見た目上ほぼワンテイクで構成された映画であることです。

事前の情報を得ないまま観ましたので、序盤の途中で気が付きました。

ワンテイク風というだけで、実際には数分から十数分にわたる長回しを巧みにCGやワイプ、暗転などでつなぎ、リアルタイムのように演出しています。

Esquire誌によれば、カメラの素早い水平移動の最中にカットを入れる手法で、継ぎ目を自然に隠しているそうです。

撮影にはステディカムとハンドヘルドを併用し、撮影監督のエマニュエル・ルベスキは、カメラ動きが 演者の精神と行動に自然に同期していると言っています。

そして、撮影スタッフはバックステージの迷宮を彷彿とさせるセットのなかで、照明機材を隠しながら移動させ、360度カバーする緻密さで、俳優とカメラの動きに合わせたライトのバレエを成し遂げています。

非常に狭い舞台裏空間や鏡を多用した構図では、カメラ自体が映り込まないようVFXで除去する工夫も行われています。

演劇界と映画界へのブラックユーモア

本作では演劇を芸術性の高いものとして持ち上げ、映画を俗的なものとして蔑んでいますが、演劇を上に見ている人への皮肉であり、同時に拝金主義の映画人への皮肉も込められています。

本作では演劇の舞台裏という閉鎖的世界を通じて、芸術の虚飾を描き出し、そこに潜む 孤独や競争、自己破壊への衝動を描き出しています。

主人公のリーガンを通じて、スーパーヒーロー文化の空虚さ、現代芸術家の承認欲求、シアターリアリズムの欺瞞と孤独、そして芸術と虚構のあいだで揺れる姿を描いています。

かなりのブラックユーモアを交えており、演劇界、映画界の両方にケンカを売っているようにも見えました。

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映画情報(題名・監督・俳優など)

監督 / アレハンドロ・G・イニャリトゥ
製作 / アレハンドロ・G・イニャリトゥ、ジョン・レッシャー、アーノン・ミルチャン、ジェームズ・W・スコッチドポール
製作総指揮 / クリストファー・ウッドロウ、モリー・コナーズ、サラ・E・ジョンソン
脚本 / アレハンドロ・G・イニャリトゥ、ニコラス・ヒアコボーネ、アレクサンダー・ディネラリス・Jr、アルマンド・ボー
撮影 / エマニュエル・ルベツキ
プロダクションデザイン / ケヴィン・トンプソン
衣装デザイン / アルバート・ウォルスキー
編集 / ダグラス・クライズ、スティーヴン・ミリオン
音楽 / アントニオ・サンチェス

出演
マイケル・キートン / リーガン
ザック・ガリフィナーキス / ジェイク
エドワード・ノートン / マイク
アンドレア・ライズブロー / ローラ
エイミー・ライアン / シルヴィア
エマ・ストーン / サム
ナオミ・ワッツ / レズリー
リンゼイ・ダンカン / タビサ

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