戊辰戦争の北越戦争で幕府軍から朝廷軍へ寝返った新発田(しばた)藩を舞台にした映画です。
実在の出来事を描いたわけではありません。
ですので、このプロットであれば、舞台はいつの時代でもよかったことになります。
戊辰戦争時期の新発田藩を選んだ理由がよく分かりませんでした。
例えば、現代を舞台にして、テロリストによる立て籠もりとして描いてもよかったかもしれません。
この映画のように、史実の一場面を舞台にするのであれば、史実の隙間を縫って前後をピタリと整合させるようにして欲しかったです。
そして、この映画は、観てスカッとする映画ではありません。
真逆の鬱ベクトルの、単なる陰惨映画です。
人の死の描き方が生々しいのは、よく言えばリアリティの追及なのでしょう。
ですが、切り落とされた腕の跡や、肉片が飛び散るなどのシーンが多いのは、スタッフの猟奇的な趣味すら感じました。
救いどころが無い映画なのですが、トラウマになるほどの印象もない映画です。
感想/コメント
新潟湊
映画で重要な戦略的地点になるのが新潟湊です。今の新潟港です。
江戸時代まで、海運は日本海側の方が発展していました。
新潟湊はそうした海運の発展によって栄えた湊の一つです。
明治初頭の混乱期には、日本の人口で最も多かったのが新潟でした。
明治初頭の混乱期とはいえ、東京・江戸や大坂・大阪を上回った時期があったのです。
この新潟湊を巡って、新政府軍(官軍)と奥羽越列藩同盟(賊軍)が、新発田藩の取り込みに必死になります。
それだけ新潟湊が戦略的に重要な地点だったわけです。
新発田藩の立場
新発田藩は大政奉還後の早い段階から新政府寄りの立場だったようです。
ですが、周辺を幕府側に囲まれているため、新政府軍が来るまでのあいだ、周囲から攻撃されないように、のらりくらり外交でしのいだようです。
こうした態度は周辺国に対する裏切り行為になりますので、戊辰戦争後は周辺国からの視線は冷たいものになります。
二人の主人公
本作の主人公は二人です。
駕籠かき人足の政(まさ)と、剣術道場の道場主・鷲尾兵士郎(わしおへいしろう)です。
政は、妻・さだを手籠めにした新発田藩士を殺害して、侍殺しの罪人になります。
政の行動原理は単純です。とにかく生き延びて、妻・さだのもとに戻り、新発田藩から抜け出すことです。
そのため、そもそも新発田藩への忠誠心はありませんし、他の罪人への裏切り行為を平然と行います。
途中、政は自分はいろんな人を不幸にしてしまうと悔やむ場面がありましたが、政の行動原理を見ていると、そうだろうね、と白々しい気持ちになりました。
一方で、鷲尾兵士郎は下級武士のため、藩の上層部の意向を知りません。反新政府の立場です。
ですが、新発田藩への忠誠は厚いです。
この鷲尾兵士郎は、己の信じる正義のため、他人を窮地に陥れてしまっていることを意に介さない部分があるようです。
こういう人についていくと、危険極まりありません。
主人公二人のベクトルの向きは反対で、一致する点が見出せません。
異なるベクトルで映画を引っ張っていこうとするのがいけないのかもしれません。
映画情報(題名・監督・俳優など)
政 / 山田孝之
鷲尾兵士郎 / 仲野太賀
赤丹 / 尾上右近
なつ / 鞘師里保
ノロ / 佐久本宝
引導 / 千原せいじ
おろしや / 岡山天音
三途 / 松浦祐也
二枚目 / 一ノ瀬颯
辻斬 / 小柳亮太
爺っつぁん / 本山力
入江数馬 / 野村周平
荒井万之助 / 田中俊介
小暮総七 / 松尾諭
溝口内匠 / 阿部サダヲ
寺田惣次郎 / 吉沢悠
里村官治 / 佐藤五郎
溝口直正 / 柴崎楓雅
仙石善右エ門 / 音尾琢真
溝口みね / 西田尚美
溝口加奈 / 木竜麻生
さだ / 長井恵里
村娘 / ゆりやんレトリィバァ
山縣狂介 / 玉木宏
岩村精一郎 / 浅香航大
杉山荘一郎 / 佐野和真
世良荘一郎 / 安藤ヒロキオ
水本正虎 / 佐野岳
水本正鷹 / ナダル
色部長門 / 松角洋平
斉藤主計 / 駿河太郎
原案 / 笠原和夫
監督 / 白石和彌
脚本 / 池上純哉
音楽 / 松隈ケンタ
企画・プロデュース / 紀伊宗之
プロデューサー / 高橋大典
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