(映画)アナと雪の女王2(2019年)の感想とあらすじは?

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前作「アナと雪の女王」の続編です。

本作ではエルサが魔法を使えるようになった理由が明かされます。

子供も楽しんでみられる映画ですが、より大人向けの映画になっています。

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この年に公開された映画やドラマを下に方に載せておりますので、ご参考になさってください。

感想/コメント

映画のテーマ

大きなテーマが複数あります。

異文化摩擦

まず、アレンデールとノーサルドラの異文化摩擦というテーマ。サミュエル・ハンチントンの「文明の衝突」が頭に浮かびました。

単純化すれば、冷戦後の対立軸として、文明と文明の対立が軸になり、それらが接するところで紛争が起きやすくなるというものです。

ハンチントンの想定は西欧諸国とロシア、イスラムが主軸でしたが、異なる文明間では摩擦が起きやすいという提起は傾聴に値します。

アレンデールのモデル

アレンデールはノルウェーをモデルにしています。

随所にノルウェーのフォークアートであるローズマリングが描かれ、登場人物は民族衣装のプーナッドをモチーフにした衣装を身に着けています。

クリストフは先住民族の衣装という設定のようです。

ノーサルドラのモデル

そして、ノーサルドラにもモデルがあります。

スカンジナビア半島やロシア北部などに住む先住民族のサーミです。

サーミもアメリカにおけるネイティブ・アメリカンなどのように他の民族からの差別や迫害の歴史があります。同化政策もありました。

かつてノルウェー語でラップ人とも呼ばれていましたが、現在では蔑称と受け取られ、使われなくなっています。

マイノリティ

次に、マイノリティ問題というテーマ。これは異文化問題の別の側面からの見方でもあります。

どの国においてもそうですが、差別や迫害の歴史は蓋をされ、見えにくくされています。

本作においては、霧の壁の向こうに閉じ込める(30年も!)というかたちで表現されています。

エルサとアナは、蓋をされていた過去の忌まわしい歴史的事実に直面しなければならなくなります。

それと同時に、前の世代の負の遺産を否が応でも引き継がなければならなくなります。

次世代、後世へ、何を引き継ぎ、何を引き継がせないのか、現代政治へのアンチテーゼともいえるテーマです。

マイノリティとしてのエルサ

そして、このマイノリティ問題は、個人レベルまで落とし込まれています。エルサです。

エルサは、ただ一人、雪や氷を操る魔法の力があります。姉妹なのに、エルサには特別の力があり、アナにはその力がありません。

人と違う、ということに悩み生きてきたのがエルサです。そして、人と違う、ことがバレないように隠れて生きてきたのが、前作でした。

前作は、エルサにとっては自己肯定への道のりでした。本作では、人と違うことの根本理由を知ることによって、心から自己肯定できるまでの姿を描いています。

エルサとアナの役割分担

映画は二人のヒロインが軸ですが、映画につきもののラブロマンスはアナが引き受けています。

アナは典型的なヒロインで、自由奔放ですが芯の強さを持っています。これまでのマジョリティなヒロイン像です。

マジョリティとマイノリティ。姉妹の役割分担が対照的なのがこのシリーズの特徴ともいえます。

ダイバーシティとインクルージョン

そしてマイノリティであることを受け入れ共に生きていくというメッセージは、性別、人種、階級、宗教など、すべてを取り払ったダイバーシティとインクルージョン世界を目指すということです。

ダイバーシティは「多様化」を目的としています。ですが、これにより、かえって価値観の相違による衝突や対立などのリスクが高まる可能性があります。

また、ダイバーシティの推進によって多様性を実現したとしても、全ての人の意識を維持し、継続化できるのかという課題があり、意識を持続させるための環境整備が重要です。

一方、インクルージョンは「多様性の受容と活用」を目的としています。

多様な価値観や考え方だけではなく、国籍、人種、性別、年齢、学歴、宗教、ライフスタイル、障害の有無など、あらゆる違いを強みとして捉えて、全体の最大化を図ることが目的です。

ダイバーシティとインクルージョンは両輪であり、同時に押し進めることで互いの欠点を補い、力を発揮します。

映画の最後に描かれる世界のように、多様性だけを求めるのでは無く、同時に多様性を受け入れて、認め合うことが重要ということです。

極めて難しい課題であり、これまでの歴史の中では克服されてこなかった課題ですが、映画は未来へ希望を繋げています。

四大精霊

地、火、風、水という四大精霊を扱ったのは意外でした。これらをつなぐ第五の精霊がいるという設定にはオリジナリティがあります。

四大精霊は、スイス出身の錬金術師・パラケルススが「妖精の書」で提唱したものです。

  • 火はサラマンダー、小さなトカゲの姿をしているとされます。映画ではブルーニという名の、青い小さなトカゲ。
  • 水はウンディーネで、人に近い容姿とされます。映画ではノックという馬の姿をしています。
  • 風はシルフですが、形は人に似ており普通の人には見えません。映画ではゲイルと名付けられました。姿はありません。
  • 地がノームで、老人の姿をしています。映画ではアース・ジャイアントという岩の巨人です。

そして、この四大精霊は自然そのものに呼応しています。エルサを第五の精霊と位置付けることで、自然と人間の共生も訴えているのです。

水には記憶がある

この映画のキーワードは「水には記憶がある」です。

免疫学者のジャック・バンヴェニスト教授が、1988年に、水は以前その水に溶けていたものを覚えているといった内容の論文を発表しました。

論文は超有名な科学雑誌Natureに掲載されたため大きな論争を巻き起こしています。Natureは科学者が一生に1度論文が載るだけでも生涯の名誉と思うほどの科学雑誌です。

結果としては、科学的反証のすえに否定されました。

バンヴェニスト教授はパリ大学医学部を主席で卒業し、2度ノーベル賞候補にノミネートされた人物で、「水の記憶」についても大まじめに研究していました。

この説は本作にとって都合がいいのです。何よりもエルサが氷を操る魔法を使うからです。なんと言っても、氷は水が凍ったものですから。

これが映画のシーンで何か所も効果的に使われています。

  • 最初に霧の壁の向こうの森で、エルサが風の精霊・ゲイルを鎮めようとした時。
  • 森の奥でアレンデールの難破船を発見した時。
  • アートハランで過去の記憶を見る時。
  • 最後にはオラフの復活ですが、ここまでの流れからオラフの復活は当然予想できます。雪だるまも水ですから。

「水には記憶がある」という説を取り入れたり、四大精霊を取り入れたり、ある意味、妖しさ満点でした。

やはり音楽が命の映画

前作同様に映画全編で音楽が重要な役割を果たしています。メインキャラがそれぞれ歌い、ノーサルドラが1つあります。

エルサの歌

エルサは2回歌っています。最初は、不思議な歌声が聞こえ始めた時。メインテーマとして宣伝などで使われた「イントゥ・ジ・アンノウン」(Into the Unknown)。2回目はエルサがアートハランにたどり着いた時の「みせて、あなたを」(Show Yourself)。

オラフの歌

オラフも霧の壁の向こうの森に着いた時に歌います。「おとなになったら」(When I Am Older)。本人はいたって真面目ですが、相変わらずコミカルな感じです。

クリストフの歌

クリストフのパートが長すぎました。我が子も、長いんだよなぁ~と言っていましたので、子供ながらにも長いと感じるらしいです。子供向けの映画で、子供が長いと思ってしまうのもどうかと思いますが…

切ないクリストフの恋心を歌い上げる「恋の迷い子」(Lost in the Woods)。スヴェンとトナカイの仲間たちの共演や、松ぼっくりをマイクに見立てるシーンなど、音楽業界への感謝の意は伝わりますが、長すぎるのは文字通り蛇足です。

曲の雰囲気は、リチャード・マークスのRight Here Waitingのような、1980年代のアメリカのバラードを彷彿させる感じです。

とはいえ、2020年前後に公開された本作に30年前の音楽の雰囲気を取り入れた意図が理解できませんでした。

スタッフの趣味でしょうか?

ノーサルドラの歌

先住民族のノーサルドラ人がエルサ達を歓迎する時の「イドゥナのスカーフ」(Iduna’s Scarf)は好みです。

ネイティブ・アメリカンやイヌイットをモデルにしている感じであり、曲もそうした雰囲気になっています。

明るめの曲ですが、聞きながらセイクレッド・スピリットのアルバム「Chants And Dances Of The Native Americans」を思い出しました。ディープなアルバムですが、傑作アルバムです。

似た系統の音楽なら、アディエマスもそうです。アルバム「The Best of Adiemus」などがおススメです。

アナの歌

一番良かった曲は、「わたしにできること」(The Next Right Thing)です。

アナが一人になって悲しみのどん底に落とされながらも、前を向いて、たとえ一歩でもいいから歩き出し、自分のできることをやろうと歌うシーンは感動ものでした。

映画館ではこのシーンですすり泣きが聞こえたので、泣いている人も多かったようです。感動的なシーンで、曲もマッチしていました。

エンドロールが流れても帰ってはいけない

劇中でも同じようなシーンがありましたが、オラフがマシュマロウらに身振り手振りで話を語るシーンが始まります。

前作でもそうでしたが、今回も狂言回しとしてのオラフの仕事は完璧でした。

理想的な英雄譚としてのあらすじ/ストーリー

この映画は、見事にジョーセフ・キャンベルが「千の顔をもつ英雄」で説いた流れを再現しています。理想的と言っていいくらいです。

分離(セパレーション)

冒険への召命

エルサは、ある日、不思議な歌声が聞こえるようになります。他の者は誰も聞こえません。超自然的な存在から冒険への召命です。

最初の国境を越える

大きく立ちはだかる霧の壁。オラフやアナ達は入ることを拒まれますが、エルサが入ることを許可されると、他の者も入ることを許されるます。

通過儀礼(イニシエーション)

試練の道

火の精霊、風の精霊などの精霊達との出会い。それぞれの精霊の怒りを鎮めなければならなりませんでした。

そして続く冒険の中で、アレンデールとノーサルドラとの不幸な過去を知ることになります。

女神との遭遇

エルサとアナの母親の真実を知ります。ノーサルドラでの事件の際に、父を助けたのはノーサルドラの少女でした。その少女こそ、エルサとアナの母。母はノーサルドラだったのです。

神格化

エルサが四つの精霊をつなぐ第五の精霊でした。そのことがわかり、エルサは新しい誕生を迎えます。

帰還(リターン)

帰還の境界越え

精霊のいるノーサルドラから、魔法のないアレンデールへの帰還。それは日常への帰還です。

二つの世界の導師

エルサは二つの世界、アレンデールとノーサルドラ、精霊と人間の世界を行き来する導師となります。

英雄としての役割

エルサの奇跡に満ちた冒険は、単なる序曲に過ぎず、エルサは懐かしの元の世界に、恩恵を携えて戻ることになります。

映画情報(題名・監督・俳優など)

アナと雪の女王2
(2019年)

監督 クリス・バック,ジェニファー・リー
脚本 ジェニファー・リー
製作 ピーター・デル・ヴェッチョ
音楽 ロバート・ロペス,リステン・アンダーソン=ロペス,クリストフ・ベック
撮影 トレーシー・スコット・ビーティー,モヒト・カリアンプール
編集 ジェフ・ドラハイム

エルサ / イディナ・メンゼル
アナ / クリステン・ベル
クリストフ / ジョナサン・グロフ
オラフ / ジョシュ・ギャッド
デスティン・マティアス中尉 / スターリング・K・ブラウン
イドゥナ王妃 / エヴァン・レイチェル・ウッド
アグナル国王 / アルフレッド・モリーナ
イエレナ / マーサ・プリンプトン
ライダー / ジェイソン・リッター
ハニーマレン / レイチェル・マシューズ
ルナード国王 / ジェレミー・シスト
パビー / キーラン・ハインズ
ノーサルドラのリーダー / アラン・テュディック
幼いエルサ / マッテア・コンフォルティ
幼いアナ / ハドリー・ギャナウェイ
不思議な声 / AURORA
ハンス / サンティノ・フォンタナ
ウェーゼルトン公爵 / アラン・テュディック
幼いアナ / リビー・スタベンラッチ
幼いエルサ / エヴァ・ベラ

エルサ / 松たか子
アナ / 神田沙也加
クリストフ / 原慎一郎
オラフ / 武内駿輔
デスティン・マティアス中尉 / 松田賢二
イドゥナ王妃 / 吉田羊
アグナル国王 / 前田一世
イエレナ / 余貴美子
ライダー / 小林親弘
ハニーマレン / 壹岐紹未
ルナード国王 / 吉見一豊
パビー / 安崎求
ノーサルドラのリーダー / 飯島肇
幼いエルサ / 黒川聖菜
幼いアナ / 新津ちせ
不思議な声 / AURORA
ハンス / 津田英佑
ウェーゼルトン公爵 / 多田野曜平
幼いアナ / 稲葉菜月
幼いエルサ / 佐々木りお

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