映画をこの上なく愛する人だけでなく、幼いころの幸せな思い出を持つ人、そうしたことに憧憬を抱く人、郷愁、哀愁を感じたい人にはとてもいい映画ではないかと思います。
評価もそうしたものの上に成り立っており、多くの好意的な評価で占められています。
そうした高い評価に期待して観たのですが…、感性の違いなのでしょうか、何の感慨も抱くことがありませんでした。
感激のポイントなどは良く分かっているのですが、心が動かされませんでした。
いい映画だと思いますが、自分好みではなかっただけのことです。
基本的にミーハーな人間なので、世間で高評価の映画であれば、同じように高評価で見てこられたのですが…。
もしかしたら、時代のせいなのかもしれません。
公開当時、もしくは公開から比較的近いところで見ていれば違った思いを抱いたかもしれません。
公開から30年近くたってから見たので、時代の雰囲気がまるっきり異なってしまっています。
時代の雰囲気が異なるということは、社会的な感性も変わっており、知らず知らずのうちに社会的な感性の変化に影響されて、自分の感性も変わってきているのだと思うのです。
そうした感性の変化が、この映画を見ても何の感慨も抱かせなかった原因かもしれません。
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メンター
メンターという言葉があります。
指導者や助言者という意味ですが、精神的な拠り所としての師、というニュアンスで使っている人も多いように思います。
そのため、ややもすればメンターに強く影響され、メンターの言う通りに自分の人生を歩もうとまでする人もいます。
本作の主人公サルヴァトーレ(=トト)はそこまでではないが、アルフレードに強い影響を受けて人生を歩んでいます。
音楽
この映画のメインテーマはとても有名で、一度は聞いたことがある人が多いのではないでしょうか。
エンニオ・モリコーネが手掛けたメインテーマは、公開されてから今日に至るまで、色の焦ることがありません。
こちらは間違いなく映画史に残る名曲の一つです。
あらすじ/ストーリー
訃報の知らせ
息子に電話で連絡を取ろうとする老母と娘。
息子は30年故郷に戻ってきていないが、知らせないわけにはいかない。
息子にとって大切な人の訃報だった。聞けば戻ってくるはずだった。
仕事を終えて帰宅したサルヴァトーレに伝言があった。
それはアルフレードが亡くなったという知らせだった。
サルヴァトーレはベットに横になりながら、昔を思い出していた。
外はあいにくの嵐。稲光が顔を照らしていた…。
少年時代
少年時代、サルヴァトーレはシチリアに母と妹と三人で暮らしていた。
父は戦地に行っており、戻ってきていなかった。世の中はまだ大戦中だった。
トトと呼ばれていたサルヴァトーレは地元の映画館パラダイス座に忍び込んでは、上映前の映画を覗き見ていた。
トトは司祭の仕事の手伝いもしていた。新しい映画を公開する前、司祭は必ず検閲し、不適切なシーンをカットさせていた。その多くはキスシーンだった。
映写室で働いているのが、この村で唯一の映写技師のアルフレードだった。
トトは映写室でカットされたフィルムを宝物のように集めていた。
トトの母は、トトが映写室に入りびたりになっていることを好ましく思っていなかった。
トトの母から文句を言われたアルフレードはトトを追い返そうとした。
だが、トトの熱意に根負けしたアルフレードは内緒でトトを映写室の中に入れて仕事を手伝わせるようになった。
火事と新しい映画館
村には娯楽と呼べるものは映画しかなかった。
だが、その映画も、ある日の夜の上映中にフィルムに火がついたことによって、パラダイス座が火事になり観られなくなってしまった。
この火事のせいでアルフレードは火傷を負い、失明してしまう。
パラダイス座はサッカーくじ成金が金を出して、新たにニュー・シネマ・パラダイスとして生まれ変わった。
だが、アルフレードが失明してしまったため、映写技師が不在だった。
形式上、オーナーが映写技師として登録したが、実際はトトが映写技師として働くことになった。
トトはアルフレードから映写の技術を教わっており、村で唯一映画を映すことができたからだった。
映画技師と恋
青年になったトトは学校に通いながら、映写技師として働いていた。
アルフレードは映写技師としての仕事はできなかったが、映写室に来てはトトと話をしていた。
トトの通う学校に転校生がやってきた。
銀行家の娘でエレナという。トトはエレナに一目ぼれした。
エレナに思いを告げるも、エレナは期待に沿えないと答えた。だが、トトはあきらめずに待っていた。
そして、ある晩、映写室にエレナが現れ、二人の恋が始まった。
だが、その恋も長続きはしなかった。
エレナは大学進学のため村を離れた。会う機会が減る。
そして、トトも徴兵され村を離れることになった。トトが村を離れる時にエレナが戻ってくるはずだったが、エレナは現れなかった。
村を出る
数年後。
徴兵が終わってトトは村に戻った。エレナの行方は分からなくなっていた。
トトはアルフレードを訪ねることにした。
アルフレードはほとんど家を出なくなったと聞いた。だが、アルフレードはそうすることで見えるようになったことがあるという。
そして、アルフレードはトトに村を出ていくようにアドバイスした。
トトはこの村に縛りついてはいけない。なすべきことが他にある。一度村を出たら戻ってくるなとも言った。
初老になったトト、いやサルヴァトーレは映画人として働いていた。
横になりながら、物思いに更けていた。
形見のフィルム
サルヴァトーレは飛行機に乗って、30年ぶりに故郷の村に戻った。
かつてとは様変わりしている。広場には車があふれている。
アルフレードの葬儀に参列し、途中で懐かしい映画館の前を通った。
映画館はすでに閉館され、近いうちに取り壊されることが決まっていた。
葬儀が終わり、アルフレードの葬妻から一本のフィルムが渡された。それはアルフレードの形見だった。
サルヴァトーレはローマに戻り、映画館でフィルムを流した。
フィルムに映し出されていたのは、サルヴァトーレの少年時代に、カットさてえいたキスシーンを寄せ集めたものだった。
サルヴァトーレは知らず知らずのうちに涙を流していた。
映画情報(題名・監督・俳優など)
ニュー・シネマ・パラダイス(1989)
監督 / ジュゼッペ・トルナトーレ
製作 / フランコ・クリスタルディ
脚本 / ジュゼッペ・トルナトーレ
撮影 / ブラスコ・ジュラート
編集 / マリオ・モッラ
音楽 / エンニオ・モリコーネ,アンドレア・モリコーネ
出演
フィリップ・ノワレ / アルフレード
ジャック・ペラン / サルヴァトーレ
サルヴァトーレ・カシオ / トト(サルヴァトーレ・少年時代)
マルコ・レオナルディ / サルヴァトーレ(青年時代)
アニェーゼ・ナーノ / エレナ
プペラ・マッジオ / サルヴァトーレの母
レオポルド・トリエステ / 司祭
アントネラ・アッティーリ / 若き日のサルヴァトーレの母
エンツォ・カナヴァレ / パラダイス座支配人
イサ・ダニエリ / アンナおばさん
レオ・グロッタ / 劇場の案内人
タノ・チマローサ / 鍛冶屋
ニコラ・ディ・ピント / 広場をうろつく男
映画賞など
アカデミー賞
- 最優秀外国映画賞
カンヌ国際映画祭
- 審査員特別賞
英国アカデミー賞
- 最優秀主演男優賞
- 最優秀助演男優賞
- 最優秀外国語映画賞
- 最優秀作曲賞
- 最優秀脚本賞
ゴールデングローブ賞
- 最優秀外国語映画賞
ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞
- 最優秀音楽賞
ヨーロッパ映画賞
- 最優秀男優賞
- 審査員賞