宮城谷昌光の紹介と作品・著書|時代小説県歴史小説村

宮城谷昌光の紹介と作品・著書

略歴

(1945- )
宮城谷昌光。作家。愛知県蒲郡市生まれ。愛知県立時習館高等学校、早稲田大学第一文学部英文科卒。
白川静氏に深い影響を受け、古代中国に素材を求めた作品が多いです。

宮城谷昌光氏に思う

古代中国を題材にした歴史小説の多い宮城谷昌光氏ですが、特に春秋・戦国時代は他者の追随を許さない質と量があります。

宮城谷氏には、いくつか特徴があると思っています。

一つ目は、君主を描いたものよりも臣下を描いた作品の方が圧倒的に多いということです。

二つ目は、ピンポイントでその人物を描くというよりは、祖父や父の事跡がある程度わかる場合は、そこから書き起こすことが多いということです。

三つ目は、信義というものに欠けた人間は、どうやら好みではないらしいということです。この場合、信義というのは徳と言い換えても良いかと思います。もしくはこうも言い換えられるかもしれません。それは、武のみで他者を圧する者は好みではない、と。こうした点は一貫しているように思われます。

臣下を描いたものが多いというのは、国というものは、どれだけ君主が優れていても臣下に素晴らしい者がいないと繁栄しないという、ごく当然のことから来ているのでしょう。

どれだけ多くの優秀な臣下を見いだせるかというのが君主の力量であり、そうした君主像というのは多くの作品で見られます。

さしずめ、現在ならば優秀な社員を抱えた社長という感じでしょうか。優秀な社員を見いだして仕事をさせることによって会社を繁栄させるというのは当たり前のことです。社長一人がどれだけ優秀でも、一人では限界があることを感じ取らなければなりません。

むしろ社長は優秀であればあるほど一歩退いて部下に任せなければならないということでもあろうかと思います。

祖父や父の事跡から丹念に掘り起こしているのは、その人物の人格形成等は、その人物一代だけではなし得ないという考えがあるのでしょう。

祖父や父から薫陶を受け、もしくはその姿を見て学び取り、それがその人物を偉大にしていくのです。鳶が鷹を生むわけではなく、鷹が鷹を生んだだけということです。

祖父や父というのは、環境と言い換えても良いだろうと思います。偉大な人物になるには、環境が整えられてきていたということです。

環境には様々なものがありますが、現在なら教育環境などもそうした環境の一つでしょうし、友人関係や上司部下の関係というのもそれにあたります。

なにもこうしたことは古代中国だけではなく、各国の歴史の中でも見られることです。例えば塩野七生氏の「ローマ人の物語」を読めば、歴代の皇帝の環境がどうであり、それが本人にどう還元されたかというのがわかります。

信義にもとる、もしくは徳が無く、武のみで他者を制圧したものというのは短命です。これは面白いほどといってよいですが短命です。

様々な理由があるでしょうが、結局は制圧地の住民の叛乱にあったり、部下の叛乱、もしくは息子や家族の叛乱にあったりして命を永らえません。

現在でいえば、金にものをいわせてというやり方が反感を買いやすいというのを考えれば納得がいくでしょう。

このように宮城谷氏の作品は、君主を社長、臣下を社員、武を金と置き換えることによって簡単に極めて現代的な読み方ができます。

歴史小説は小説であるから楽しむものだと思っている私は、こうした読み方はほとんどしませんが、こうした読み方もあります。もしかしたら、こうした読み方で読まれている方も多いのかもしれませんが…。

司馬遼太郎氏や塩野七生氏の作品はこうした読み方のしやすい作品が多く、それぞれの氏の作品が広く受け入れられている理由というのもこうした点にあるのかもしれないと思うことがあります。ですが、一つの読み方でしかありません。

最後に、こうした読み方をするのでしたら、宮城谷氏が選んだ主人公達を考えてみなければなりません。

何故この人物を選んだのか?ということです。

伊尹は宮廷料理人から宰相となりました。太公望は伝説でよく知られるように針のない糸を垂らして魚釣りをしている時に君主に見いだされました。百里奚は七十才を過ぎてから秦の宰相となりました。

名もなく地位もなく、一介の在野の人間でしかなかった者が歴史に名を残しています。名を残し得たのは、見識のある君主に見いだされたからです。

人を識ることのできる人物の少なさを感じ取り、己を磨くことの必要性というのも感じ取れるのではないでしょうか。それはトップにいる人であればあるほど必要ということでしょう。

古代中国が舞台(作品の時系列)

古代中国の歴史に関して、私は王朝名だけしか知りません。

その時代に生きた人々についても、個別の名を聞いたことはあっても、その人物がどの時代に生きていたのかは知りません。

そこで、下記において、宮城谷昌光氏が小説化した、古代の人物の生きた時代などを、大ざっぱではあるが時系列に並べてみました。

時系列で読んでみたい人にとって、一つの参考になれば幸いです。

夏以前

  1. 「布衣の人」(『侠骨記』収録)・・・三皇五帝時代の一人「舜」を描く。

  1. 「地中の火」(『沈黙の王』収録)・・・后羿(こうげい)が主人公。夏王朝初期
  2. 天空の舟 小説伊尹伝』・・・商王朝成立に大きな役割を果たした伊尹(いいん)が主人公。前17世紀前後

殷(商)

  1. 「沈黙の王」(『沈黙の王』収録)・・・初めて文字を生み出した商の高宗武丁が主人公。前12世紀頃
  2. 太公望』・・・周の軍師で後に斉の始祖となった太公望が主人公。前11世紀頃/殷滅亡期
  3. 王家の風日』・・・斜陽の商を支える箕子が主人公。「太公望」と一対の作品。前11世紀頃/殷滅亡期

  1. 「甘棠の人」(『侠骨記』収録)・・・周王朝を太公望と共に支えた召公奭が主人公。前11世紀頃/周建国期
  2. 「妖異記」(『沈黙の王』収録)・・・西周の崩壊を描く。前8世紀頃/周滅亡期

春秋時代

  1. 『春秋名臣列伝』・・・春秋時代の名臣20人
  2. 「豊饒の門」(『沈黙の王』収録)・・・西周の崩壊と東周の再建を描く。前8世紀頃/周再建
  3. 『管仲』・・・春秋五覇の一人斉の桓公に仕えた名宰相・管仲が主人公。前7世紀
  4. 「侠骨記」(『侠骨記』収録)・・・管仲が治めていた斉の隣国魯の将軍曹沫が主人公。前7世紀(管仲と同時期)
  5. 重耳』・・・春秋五覇の一人で放浪のすえ君主となった重耳が主人公。前7世紀
  6. 介子推』・・・重耳の陪臣でのちに神となった介推が主人公。前7世紀頃
  7. 「春秋時代 買われた宰相」(『侠骨記』収録)・・・奴隷から秦の君主に買われ宰相となった百里奚が主人公。前7世紀
  8. 「孟夏の太陽」(『孟夏の太陽』収録)・・・晋の趙一族の物語。前7世紀後半
  9. 沙中の回廊』・・・兵から名宰相になった晋の士会が主人公。前7世紀後半
  10. 華栄の丘』・・・小国の宋の文公に仕えた宰相・華元が主人公。前7世紀末から6世紀
  11. 夏姫春秋』・・・小国の鄭に生まれた絶世の美女夏姫が主人公。前7世紀末から6世紀
  12. 「月下の彦士」(『孟夏の太陽』収録)・・・晋の趙一族の物語。前6世紀
  13. 「雨」(『玉人』収録)・・・前6世紀
  14. 晏子』・・・斉の名将である父・晏弱、司馬遷が尊敬した息子で名宰相の晏嬰を描く。子産、叔向と同時代。前6世紀
  15. 「鳳凰の冠」(『沈黙の王』収録)・・・晋の公室の流れを汲む羊舌氏の叔向が主人公。晏子、子産と同時代。前6世紀
  16. 『子産』・・・春秋時代最高の宰相で知識人だった鄭に仕えた政治家・子産が主人公。晏子、叔向と同時代。前6世紀中頃
  17. 「指」(『玉人』収録)・・・前6世紀後半から5世紀前半
  18. 「孔丘」・・・孔子を描く。前6世紀後半から5世紀前半
  19. 「老桃残記」(『孟夏の太陽』収録)・・・晋の趙一族の物語。前5世紀
  20. 「隼の城」(『孟夏の太陽』収録)・・・晋の趙一族の物語。前5世紀
  21. 「風と白猿」(『玉人』収録)・・・前4世紀
  22. 『呉越春秋 湖底の城』・・・伍子胥、呉王夫差、越王勾践、范蠡の生涯を描く

戦国時代

  1. 『戦国名臣列伝』・・・名将16人の列伝
  2. 孟嘗君』・・・斉・魏・秦の宰相を歴任した孟嘗君・田文が主人公。「楽毅」と同時代。前4世紀後半から3世紀
  3. 楽毅』・・・燕の昭王を助けて、斉を滅亡寸前まで追い込んだ燕国の武将・楽毅が主人公。「孟嘗君」と同時代。前4世紀後半から3世紀
  4. 青雲はるかに』・・・秦に仕えた政治家・范雎が主人公。前4世紀後半から3世紀
  5. 『公孫龍』…戦国時代の思想家である公孫龍が主人公。前4世紀後半から前3世紀半ば

  1. 奇貨居くべし』・・・商人から秦の宰相になった始皇帝の父とも言われる呂不韋が主人公。前3世紀
  2. 香乱記』・・・項羽や劉邦と並び立った斉王・田横が主人公。前3世紀末
  3. 長城のかげ』・・・劉邦に近しい5人の目線で描いた短編集。前3世紀後半から2世紀
  4. 『楚漢名臣列伝』・・・項羽と劉邦に仕え活躍した異才・俊才を描く。

前漢

  1. 『劉邦』・・・劉邦を描く。
  2. 花の歳月』・・・司馬遷「史記」の「外戚世家」を描く。前2世紀
  3. 「桃中図」(『玉人』収録)・・・前2世紀後半から1世紀

後漢

  1. 『草原の風』・・・光武帝劉秀の青年時代から王朝再建までを描く
  2. 『呉漢』…天下平定と光武帝に仕えた武将・呉漢の生涯を描く。

三国時代

  1. 『三国志』・・・黄巾の乱を遡ること百年あまり前、後漢中期の孔子と並び称される楊震から描きだす新しい三国志像。1世紀末から3世紀
  2. 『三国志名臣列伝 後漢篇』
  3. 『三国志名臣列伝 魏篇』

  1. 「玉人」(『玉人』収録)・・・8世紀後半
  2. 「歳月」(『玉人』収録)・・・9世紀前半

日本が舞台

  • 風は山河より
  • 新三河物語

その他

  • 石壁の線より
  • 春の潮
  • 会社人間上昇学
  • 中国古典の言行録
  • 春秋の色
  • 海辺の小さな町
  • 春秋の名君
  • 史記の風景
  • クラシック千夜一曲 音楽という真実
  • 歴史のしずく 宮城谷昌光名言集
  • クラシック 私だけの名曲1001曲
  • ふたりで泊まるほんものの宿
  • 古城の風景
  • 孟嘗君と戦国時代
  • 他者が他者であること
  • 随想 春夏秋冬
  • 窓辺の風 宮城谷昌光 文学と半生
  • 歴史を応用する力
  • 三国志入門

紹介している作品

作家ま行

宮城谷昌光の「長城のかげ」を読んだ感想とあらすじ

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宮城谷昌光の「香乱記」を読んだ感想とあらすじ

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宮城谷昌光の「玉人」を読んだ感想とあらすじ

覚書/感想/コメント 6つの短編からなる短編集です。恋物語が中心です。 文庫の解説をしている宮部みゆき氏は、6作品にそれぞれミステリーの要素があると書いています。 宮部みゆき氏によると、「雨」はヒュー・ウォルポー...
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宮城谷昌光の「沈黙の王」を読んだ感想とあらすじ

「沈黙の王」は文字以前の時代、商のお話し。「地中の火」は夏王朝初期。「妖異記」「豊穣の門」は周末期の混乱。「鳳凰の冠」は夏妃の子、孫の代に関わる物語
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宮城谷昌光の「太公望」を読んだ感想とあらすじ

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1) 最高

宮城谷昌光の「奇貨居くべし」を読んだ感想とあらすじ(最高に面白い!)

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1) 最高

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4) 面白い

宮城谷昌光の「華栄の丘」を読んだ感想とあらすじ

覚書/感想/コメント 春秋時代の宋の宰相・華元を描いた小説。同時代には晋に趙盾がおり、士会がいる。春秋五覇のひとりにあげられる楚の荘王もいる時代である。 華元は生涯詐術と無縁の男であった。華元ほど平和を熱望した宰相もい...
4) 面白い

宮城谷昌光の「俠骨記」を読んだ感想とあらすじ

覚書/感想/コメント 古代中国を舞台にした短編集。 それぞれ時代区分が異なる。時系列で並べると次のようになる。 「布衣の人」が最も古く、三皇五帝時代の一人「舜」を描いている。作中ではほとんど「俊」として書かれてい...
4) 面白い

宮城谷昌光の「孟夏の太陽」を読んだ感想とあらすじ

晋の文公(重耳)を支えた趙衰の子・趙盾からはじまり、趙盾の息子・趙朔、趙朔のひ孫・趙鞅、趙鞅の子・趙無恤という趙家四人を扱った短編集。

3) かなり面白い

宮城谷昌光の「沙中の回廊」を読んだ感想とあらすじ

重耳なきあとの晋を支えた士会を描いた小説。晋の「武」の側面を描いている感じでもある。なぜなら、士会という人物が優れた戦術・戦略家だったからである。
作家ま行

宮城谷昌光の「王家の風日」を読んだ感想とあらすじ

覚書/感想/コメント 中国で商(殷)から周へ王朝が移る時代。太公望が活躍した時代でもあるが、その時代に商を支えた箕子(きし)を軸にすえた小説。 この小説は、宮城谷昌光氏の「太公望」とは表裏一体の関係にある小説である。 ...
3) かなり面白い

宮城谷昌光の「孟嘗君」を読んだ感想とあらすじ

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作家ま行

宮城谷昌光の「重耳」を読んだ感想とあらすじ

十九年に及ぶ亡命生活の後に晋の君主となり、春秋五覇の一人に数えられるまでになった文公こと重耳(ちょうじ)を描いた小説。苦難を耐え忍び、永い年月の末に君主となった人物である。
2) 超面白い

宮城谷昌光の「天空の舟 小説・伊尹伝」を読んだ感想とあらすじ(面白い!)

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2) 超面白い

宮城谷昌光の「介子推」を読んだ感想とあらすじ(面白い!)

覚書/感想/コメント 介推。後に介子推とよばれ、中国全土の人々から敬われ、慕われ、漢の歴史家である司馬遷をも感動させ、後漢の時代には神となった男。春秋時代に覇者となった重耳(晋の文公)の臣下だった人物だ。 「世間のほめ...
1) 最高

宮城谷昌光の「晏子」を読んだ感想とあらすじ(最高に面白い!素晴らしい小説!)

晏弱と晏嬰の親子にわたる物語だが、主眼は晏嬰の方にある。晏嬰を書くために晏弱から書き始めたというのが本書である。本書は、最期の一章のためだけに、それまでの章があると思う。
4) 面白い

宮城谷昌光の「夏姫春秋」を読んだ感想とあらすじ

夏姫は「妖婦」、巫臣は「佞臣」のイメージがあった。夏姫は、かの女を撫有したものはつぎつぎ奇禍に遭う。恐ろしい女だというイメージがある。
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