逢坂剛の「重蔵始末 第1巻」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

近藤重蔵。幼時から神童と呼ばれ、後年蝦夷地の探検で名を知られる実在の人物を主人公としている。身の丈六尺近く、御先手与力の中でも際だって体の大きな男。年が明けて二十一という若さである。

重蔵は脇差し、十手のかわりに赤い鞭を持ち歩いている。博識剛勇ながら、狷介な性格で、傍若無人でもある。その性格が災いしてか、晩年は不祥事を起こしている。

本シリーズは、若き日の近藤重蔵からスタートするが、若き日の重蔵は火付盗賊改方の与力として登場する。火付盗賊改方といえば、まず頭に思い浮かぶのが池波正太郎の「鬼平犯科帳」であろう。

しかも丁度、重蔵の上役である松平左金吾定寅は、本役の御先手弓組の長谷川平蔵宣以の加役としておおせつかっているので、まさに「鬼平犯科帳」と同じ時代が描かれることになる。両者を対比しながら詠むと面白いだろう。

さて、「茄子と瓜」は結末が痛々しい物語である。その物語で重要なのが以下の狂歌である。

・鯛屋貞柳

<茄子田楽に寄する恋>

茄子こそ 瓜実顔に 負けじと 油付けたり くしをさしたり

・山東京伝の返歌

油付け くしをさしたは よけれども 色の黒いが 味噌をつけたり

この出来の良い狂歌が人を傷つけ、悲劇が起きるのだが、軽い気持ちで人をからかうと、後で痛い目に遭うという典型であろう。

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内容/あらすじ/ネタバレ

赤い鞭

雷電為右衛門と鬼ヶ嶽谷右衛門の土俵上での取り組みを見守る見物客に混じって水窪の黒猿がいた。

取り組み終了後、鬼ヶ嶽谷右衛門を水窪の黒猿が追っていく。それを根岸団平が付ける恰好になった。

十日程前に寺で小坊主が殺された。殺された日に本堂に水窪の黒猿という盗っ人がいることが分かったのだ。

重蔵は松平左金吾組に組み込まれてから、まだなにも手柄を立てていない。ここは重蔵と橋場余一郎、団平で盗っ人の首を挙げてご機嫌をうかがおうと考える。

しかし、なぜ水窪の黒猿は鬼ヶ嶽谷右衛門を付けるのか。もしかして、鬼ヶ嶽谷右衛門が水窪の黒猿の引き込み役なのだろうか?

北方の鬼

殺しの現場を橋場余一郎と根岸団平が覗き込んでいた。その現場には顔なじみの南町奉行所定回り同心の青柳隼人がいた。

最近、立て続けに似たような手口での殺しが続いている。それで、余一郎は気になって覗き込んだのだ。

重蔵達はこの殺しを追っている内に常磐津の師匠・音若と知合う。そして、さらに聞き込んでいる内に、獣臭のする大きな人間の姿が浮かんでくる。

その体から力士かと思われたが、いっぽうで力自慢の見せ物がでており、オロシャの者がでているというのを聞きつける。

さて、調べを続ける内に、殺された人間には共通点があった。皆同じ日に酒の席で同席していたのだ。

七化け八右衛門

根岸団平が女の悲鳴を聞いたのは重蔵の使いの帰りだった。駆けつけると、女と男がもみ合っている。聞いてみると、男は女の姉の敵であるという。

その場を落ち着かせると、女は緊張が切れたのか気を失ってしまった。そこに女を知る彦太郎という男が現れ、女を連れて帰った。

団ぺいはその後、気になり男の名乗った身分等を調べたが、そのような男がいないことが分かった。そのことを戻ってから重蔵に告げた。

最近、怪盗・七化け八右衛門と抜き錠の留五郎が江戸に舞い戻ってきたとの噂が立っている。何か関係があるのだろうか。

茄子と瓜

根岸団平は重蔵と隠居した父親の右膳の伴をしていた。団平は二人が用事を済ますまで待つことになったが、待つために入った店でとんでもないことに巻き込まれる。

店には一組の先客がいた。男女連れで、男は高木兵馬、女は文緒というらしい。兵馬はしたたかに酔い、戯れに狂歌を詠んだが、これを詠んだ文緒が剣を抜き兵馬を殺した。

その後、文緒は幼女を人質に立てこもった。悪いことに、立てこもった家には重蔵馴染みの常磐津の師匠・音若もいた。団平はすぐさま重蔵に知らせに行く。

猫首

世上では<葵小僧>が騒がせていた。そうした中で、葵小僧の手とは違う盗難事件が続いている。金額は大きくないもののいつ忍び込んだのかが分からない鮮やかなものであった。奇っ怪なのは、いずれの家も厠から飼い猫の死体が発見されたことだった。

この日、重蔵、余一郎、団平は久方の休みをもらい、飛鳥山に花見にきていた。そこで女のものを盗んだ掏摸に出会う。

盗んだものを取り返し、女の手許に戻ったが、重蔵は女の持っていた薬に禁制の薬が入り込んでいるのを見つける。女は驚きながらも知らないと述べる。

その場を離れたが、重蔵は団平に女を見張らせることにした。

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本書について

逢坂剛
重蔵始末
講談社 約三六〇頁
連作短編
江戸時代 火盗改もの

目次

赤い鞭
北方の鬼
七化け八右衛門
茄子と瓜
猫首

登場人物

近藤重蔵…火盗改与力
根岸団平…重蔵の若党
橋場余一郎…火盗改同心
為吉…「はりま」主、元力士「播磨灘沖右衛門」
えん…為吉の女房
鬼ヶ嶽谷右衛門…力士
松平左金吾定寅…火付盗賊改方加役
佐田陣十郎…筆頭与力
音若…常磐津の師匠

赤い鞭
 鬼ヶ嶽谷右衛門…力士
 水窪の黒猿

北方の鬼
 赤壁の三吉
 雲雀姫
 オロシャ

七化け八右衛門
 杉野弥之助
 おしの
 彦太郎
 笠原小源太

茄子と瓜
 文緒
 高木兵馬
 せき

猫首
 おもよ
 唐仙房伝右衛門…唐物屋
 新十郎…出島屋手代
 絃屋庄兵衛

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