池波正太郎の「江戸の暗黒街」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

池波正太郎作品で、江戸暗黒街の顔・羽沢の嘉兵衛が度々登場する。本人が直接登場する場合もあれば、黒幕として取りざたされる形での登場もある。だが、いずれにしてもよく登場する。また、大坂の顔役・白子の菊右衛門の名も登場する。

この羽沢の嘉兵衛、様々な作品に登場するが、時系列で一度並べてみると面白いかもしれない。恐らく、正確には時系列で並べられないだろうし、矛盾点がいくつも出るだろうが、およその流れだけでもつかめたら、それはそれで面白いのではないだろうか。

池波作品における、江戸の暗黒街の年譜が羽沢の嘉兵衛を中心に見えてくるはずである。

ところで、解説にも書かれているが、江戸時代において香具師の元締が暗殺を影の生業とすることはなかった。これはあくまでも池波作品における設定であり作り話である。

私は当然そうだろうと思い、池波正太郎も上手い設定を考えたものだと思っていたが、香具師の元締が暗殺を影の生業とするという設定を信じる読者も多かったようだ。そのことを解説を読んで知り驚いたので、ここに書いておく。

ちなみに、「仕掛人・藤枝梅安」の世界で使われる符丁は池波正太郎の創作であり、依頼を受け暗殺をする”仕掛人”というのも、池波正太郎の造語である。念のために書いておく。

内容/あらすじ/ネタバレ

おみよは見た

青堀の小平次はお八重という女の殺しを金二十五両で引き受けた。首尾良く仕事を果たしたと思っていたが、現場を少女に見られてしまった。人が来たので逃げたが、小平次はその少女を殺そうと思っていた。でなけでば、自分が殺されてしまう。

少女・おみよはお八重を殺した男のことを告げ口するつもりはなかった。おみよはお八重を憎んでいたからである。

だれも知らない

夏目半五郎は剣の強い浪人を見て、この人に頼もうと考えた。夏目半五郎は井関十兵衛を敵とする身である。だが、半五郎は剣がからっきしだめである。その仇討を浪人に頼もうと思ったのだ。

浪人・山口七郎は半五郎の頼みを引き受けた。その手付け金として二十五両を受け取った。だが、山口七郎は井関十兵衛を見て、手強いと思った。そしてそのまま金を持って行方をくらましてしまった。

同じ頃、井関十兵衛も姿を消した。最近身の回りにうろつく人間が現れ、恐くなったのだ。

白痴

寅松は女を襲っている男を無我夢中で追い払った。そのときに、はずみで男を殺してしまった。恐ろしくなった寅松はそのまま逃げた。だが、男は死んでいなかった。その代わり、記憶をなくしてしまう。

逃げた寅松は、道を誤り、つつもたせを稼業にする薄汚い人間に成り下がってしまっていた。

男の毒

おきよは黒股の弥市に嬲られていた。弥市は労咳に病んでいた。そして、その弥市からおきよは逃げられないでいた。だが、ある日おきよは弥市を殺してしまう。恐ろしくなったおきよは伊助のところに転がり込んだ。

ほとぼりが冷めた頃。おきよは嫁いだ。だが、長くは続かない。どうしても浮気の虫が騒ぐのだ。それは、黒股の弥市によって、男がいなければどうにもならない体にされてしまった女の宿命だった。

女毒

野川の伊三次は聖天の吉五郎の娘・お長と夫婦になることになった。すると、伊三次は聖天の吉五郎の跡継ぎになるということになる。

気分の浮かれる伊三次だが、ある場所でたまたま襖を隔てて隣の部屋にお長が入ってきた。そして、そこで交されていた会話に怒りを覚え、お長との夫婦約束を反故にする。

今度はお長が怒った。そして、追っ手を差し向けた。伊三次はこうなるのを見越して、既に逃げていたが…。

赤札の嘉兵衛が近藤市五郎に頼んだのは井筒屋徳兵衛の暗殺であった。この話を持ってきたのはきねやの松蔵である。松蔵もあるところから依頼されたのだ。

だが、不思議なものである。松蔵と井筒屋徳兵衛は知り合いだったのだ。それは、二人がそれぞれ水鶏の松蔵、黒塚の駒吉といっていた盗賊時代の仲間だったのである。そうとは知らずに、松蔵は殺しの件を、今は井筒屋徳兵衛と名乗っている黒塚の駒吉に話した。

井筒屋徳兵衛は知らぬ顔でその話を聞いていたが、内心、だれが自分を殺そうとしているのかと考えた。

縄張り

岩淵の又蔵は三の松の平十の懐刀として何人も人を殺してきた。その三の松の平十が死んで、黒谷の勘五郎と鹿渡の島之助の間で跡目争いが起きている。そして、黒谷の勘五郎には追分の重八が付き、鹿渡の島之助には羽沢の嘉兵衛が付いた。

こうした中で又蔵は、追分の重八から羽沢の嘉兵衛の暗殺を頼まれ、羽沢の嘉兵衛は追分の重八の暗殺を頼まれた。そして、ある計画が又蔵の中で出来上がった。

おきんは鎌吉に亭主殺しを百両で頼んだ。亭主は玉屋平兵衛という。平兵衛とおきんは年が離れている。それは、おきんが娼婦だったのを平兵衛が身請けをして女房にしたからである。だが、おきんは平兵衛を好いていなかった。おきんには好いた人がいたのだ。

一方、平兵衛はそんなことも知らずにいる。それより、いつ死んでも良いと思っていた。かつて武士だったのを、つまらぬことで上役を斬り、逃げなければならなくなってしまった身なのである。それが、こうして商売もうまくいっているのだ。

本書について

池波正太郎
江戸の暗黒街
新潮文庫 約三二五頁
短編集 江戸時代

目次

おみよは見た
だれも知らない
白痴
男の毒
女毒

縄張り

登場人物

おみよは見た
 おみよ
 おしん
 青堀の小平次
 羽沢の嘉兵衛

だれも知らない
 夏目半五郎
 井関十兵衛
 山口七郎

白痴
 寅松
 平次郎
 半助
 おもん
 山城屋藤兵衛

男の毒
 おきよ
 黒股の弥市
 伊助

女毒
 野川の伊三次
 お長
 船形の由蔵
 田町の弥七


 井筒屋徳兵衛
 きねや松蔵
 おもん
 宗次郎
 近藤市五郎
 赤札の嘉兵衛

縄張り
 岩淵の又蔵
 船戸の権
 芝の治兵衛
 羽沢の嘉兵衛
 追分の重八


 玉屋平兵衛
 おきん
 鎌吉

池波正太郎の仕掛人・江戸の暗黒街

仕掛人

江戸の暗黒街

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