阿部謹也の「物語 ドイツの歴史 ドイツ的とは何か」を読んだ感想

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覚書/感想/コメント

最後の約50頁はドイツ史の年表などとなっているので、実質は290頁である。

筆者の専門は中世西洋史となっているが、西洋の中でもドイツが専門の学者である。

本書では、ドイツが歴史に登場し始める9世紀位から、20世紀までを概観している。また、終章では現代ドイツの抱える問題点などを簡単にではあるが指摘している。この部分に関しては、今後の社会学などの研究が待たれる。

さて、「はじめに」に書かれているとおり、本書はドイツ史の中にヨーロッパをEUに導いていった要素がもしあるならばそれを明らかにすることが一つの目的であり、アジールの歴史を辿りながら差別された人々についても考えていくことが二つ目の視点であり、第三にドイツ的なものとは何かについて考えてみたいと述べている。また、ドイツ史の中に呪術的なものを見いだして、どのように近代世界に生き残っているかを見るのも一つの狙いだという。

【以下で内容を概観してみる】

ヨーロッパ諸言語を見ると、国の言語は国や民族をしめす固有名詞から名付けられている。だが、ドイツの場合は事情が違っている。初めに言語の表記として出現し、国家や民族名はあとで派生してくる。

また、ドイツ史が姿を現すのは、九・十世紀以後のことであり、カロリング王国が崩壊したとき、東半分に住む人々が用いた言葉によってドイツ人と呼ばれるようになる。

カロリング・ルネッサンスは古代の学芸の復興と見なされ、それ自体誤りではないが、それだけではない。中世においては学芸は政治と深く関わっていた。宗教と政治が切り離せないものだったのである。カールのルネッサンスは、政治と深く結びついた伝導のための学問の運動だった。

このころのドイツ国王は首都を持たず、常に数千人の家臣を引き連れて全国を巡回していた。

また、当時のドイツ国王は通常の貴族ではなく、聖職者達よりも上位にあり、聖なる性格を帯びていた。

叙任権闘争。中世において教会は特権を持っていた。税を免除され、通常の裁判権や法の下にも服していなかった。

だが、現実には俗人達による介入が多かった。叙任権とは司教の叙任の権利を巡って争われたためにこう呼ばれている。

ドイツでは国王は俗人と見なされていなかった。したがって、国王も俗人であり司教叙任権をもたないとする教皇側の主張は国王の存在に対する侵害を意味していた。

やがてカノッサの屈辱と呼ばれる事件が起きる。だが、一見教皇側が勝利を収めたように見えたが、事実は必ずしもそうではなかった。

1000年頃に、ドイツとスカンディナヴィア半島は約400万しか住んでいなかったといわれている。が、14世紀には1150万にのぼっている。穀物生産が飛躍的に伸びたのだ。

一方、12・13世紀にヨーロッパ各地で都市が成立している。新しく成立した都市は、独立した法を持ち、閉鎖的な共同体を構成していた。都市は自治の原則を作り出していったのだ。

十字軍と同時にユダヤ人迫害の運動が起こったことも忘れてはならない。差別の一因には、各都市で商人階層が成立しつつあったことが挙げられる。商業は卑しい職業として外国人にゆだねられ、とりわけユダヤ人にゆだねられていた。が、都市が成立し、商人階層が誕生すると、そこにはすでにユダヤ人がいたのである。

シュタウフェンの時代が終わった。シュタウフェンの皇帝がドイツに残した一つの成果はラント平和令である。

この後、ドイツはいわゆる大空位時代を迎えることになる。王がいなかったわけではない。シュタウフェン時代に、ドイツの諸侯はその地位を強固なもののしており、王のレガリア(大権)が国王の独占物ではなくなっていた。
時代は飛び…

1517年にマルチン・ルターが「九十五箇条の提題」を示してローマ教会を批判したことが宗教改革の発端となる。

この宗教改革が進展する過程で大きな役割をしたのが都市であった。1555年にアウグスブルクで国会が開かれ、宗教和議がまとめられた。

だが、この和議によって、中世が克服されたわけではなかった。また宗教改革には、例えば教育に対する変革をうながしたという側面があった。

18世紀になると、啓蒙専制政治の時代といわれる。ドイツは選挙侯・聖俗諸侯94、伯103、高位聖職者40、帝国都市51を数え、全体で300に及ぶ小国が分立していた。かろうじて皇帝と帝国議会は生き残っていたものの、ほとんど機能しておらず、実質的には領邦だった。

フランス革命が起きると、ドイツの政治地図は大きく塗り替えられた。領邦国家の秩序は大幅な再編成を迫られ、300の領域は40の単位に再編成された。

そして、1815年、ドイツ連邦が成立。ビスマルクの時代が始まる。

本書について

物語 ドイツの歴史 ドイツ的とは何か
阿部謹也
中公新書 約三四五頁
解説書

目次

はじめに
第一章 ドイツ史の始まり
第二章 叙任権闘争の時代
第三章 個人の誕生
第四章 神聖ローマ帝国
第五章 中世末期の苦悩
第六章 宗教改革の波
第七章 一五・一六世紀の文化と社会
第八章 領邦国家の時代
第九章 三十年戦争の結末
第十章 ゲーテの時代
第十一章 ビスマルクの時代
第十二章 ヴァイマール体制へ
第十三章 ナチズムの支配と敗戦
第十四章 亡命と難民の時代
終章 ヨーロッパ連合の一員として

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